2012年7月28日土曜日

ロンドン五輪開会式と都市の祝祭

いよいよ、ロンドン五輪、開催しました。二週間強の熱戦の数々、早くもサッカーやバレー、柔道も始まり、手に汗握る思いです。

そして、開会式も、イギリスそしてロンドンの都市への愛着や衝動を感じるものでした。
4つの国(カントリー)の成り立ち(イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランド)に始まり、
田園を示した丘の上の周りでは、徐々に人々の手で草木がはぎとられ、
煙突がそびえたつ産業革命へと向かいます。
テムズ川を模したラインには溶けた鉄が流れ、そして、
鉄を輪に流し込んで「熱い鉄の五輪」が出来上がる様子に、
技術と都市を発展させたイギリスの誇りが込められているようでした。

ジェームズボンドの乗ったヘリコプターが、ビッグベン、ロンドンアイ、ガーキンの脇を抜け、
タワーブリッジの下をすり抜けてスタジアムにやってきて、
スタジアムにパラシュートで降り立つ演出には、都市の魅力がふんだんに込められています。

イギリスのエンターテインメント、カルチャーを示す数々の音楽やパフォーマンスには、
ビートルズがマージ―サイドで生まれたような、カルチャーと都市との関係を、
ダンスの姿には、カルチャーと都市の祝祭の関係が原点として感じられました。

入場行進で各国担当のこどもたちが持っていた銅の花びらは、
204の地域の合わさる聖火台の花びらになるのは素敵な演出でした。

何より、感じたのは、ロンドンは運河を大切にしたまちだということ。これまで衰退エリアであったロンドン北東部の川沿い空間を用いたオリンピックパークのランドスケープも、そして、何より水運の拠点として栄えるもととなるテムズ川もとても豊かな水面をたたえています。
このテムズ川からリー川へと、ベッカムが水しぶきの上がる水上ボートに乗って聖火を運ぶその姿に、そして、最後の聖火が付いたあとのロンドン運河沿いに上がる花火に、水のまちとしてのロンドンの姿を見ました。

以下は、去る3月、建設中のオリンピックパーク付近を散策した様子です。

バークレーサイクルで、いざ東方へ。
急ピッチで東部も開発が進んでゆきます。


途中で立ち寄った大学にも、運河が横切っています。


いよいよ近づいてきました…が、運河沿いでのルートは途中で行き止まりに。。。


奥に見えるのが開閉会式や陸上会場のオリンピックスタジアム、
手前が、ザハハディド設計のアクアティクスセンター(水泳)です。

最寄駅となる?ウェストフィールドの商業施設はすでにOPENしていました。

まだ、パークの中には入れませんでしたが、開幕した風景をみて、こんな風景に
なったのかと感慨ひとしおでした。

2012年7月16日月曜日

積み上げと都市の読み込みを仕事にする

『新建築2012年7月号別冊』は、「森ビル 建築から都市へ」ということで、
森ビルのこれまでのプロジェクトの歴史を取りまとめた秀作です。

ナンバービル(第○×森ビル)時代から現代に至るまで、成長する際に
どんな技術的創意によりクリアしてきたかが整理されています。

都市の形態としてのあり方の是非についての議論は、他に譲るとして、
小さな一か所の不動産から始まり、一つ一つの課題を乗り越えつつ成長する
その姿に、起業とイノベーションのヒントを感じます。

ある意味素人として始めた貸家業から始まり、設計監理の重要性、
価値ある設計の意義、構造設備の合理性、専門家との協働性、
法制度(情報)を駆使した開発、プロジェクト執行に向けての実験の積み重ねなど、
各プロジェクトを通じて得たノウハウを蓄積してこれを積み上げてゆく様子が見えてきます。

また、ある意味で地域情報を読み込み、表通りから裏通りまで、
それぞれの地域属性をおさえて考えるその手法は、「空間型コミュニティ」(広井良典氏)
への指向性を感じます。
ある駐車場会社も、都市空間を読み込み、駐車場の満車率がちょうど9割になる道を
選びながら配置をしているという話もあります(いつも満車だと止めなくなるから)。

都市の読み方を身に着けると、起業も夢ではないかもしれません。

2012年7月5日木曜日

シャレットワークショップ

日本建築学会での催しもの、シャレットワークショップの申し込みが始まりました。

「2012年度学生と地域との連携によるシャレットワークショップ」
~松阪のまちづくりデザインを考える~

http://news-sv.aij.or.jp/taikai/2012/memorial-event/index.html#07

2012年7月2日月曜日

DAIKANYAMA T-SITEと代々木VILLAGE(その2) ~穏やかな商業再生~

もう一つ、穏やかな商業再生の事例、代々木の「代々木VILLAGE」です。

こちらは、かつての代ゼミ跡地を再生したものです。代官山とは、大人と若い女性などのターゲット層の違い、もともとストリートとして集まる旧山手通りと、代々木駅直近でありながらも受験生しか来なかった裏であることなど、条件も異なるため、評価は各人異なるでしょうが、取組みの興味深いところだけ記します。

こちらは、代ゼミ本部校の統廃合が決まったところで、コーポラティブハウジングなどの都市再生を手掛ける会社への相談を経て、表参道のレストランでも手掛けるkurkku(Mr.childrenなどをはじめとする音楽のディレクターである小林武史氏がてがけるブランド)とのコラボレーションが実現したようです。


5-10年の暫定活用であるこのプロジェクトでは、コンセプトとしてサスティナビリティー(持続可能性)をデザインでも表現するという意味で、再利用可能なコンテナを用いたとのこと。
トータルデザインには、インテリアデザイナー片山正通氏(ユニクロ、NIKEなど)、ランドスケープには、植物卸売業「花宇」5代目西畠清順氏など、こちらも様々な人たちがかかわっています。

特に、「そら植物園」と呼ばれる、花宇の植物コンサルティングプロジェクトの中で、敷地のランドスケープに、とても珍しい植物が配されているのが特徴的です。
「ロマネコンティの種」「育つのがとても早い蘇鉄」「ギターの素材であるエゾ松」「4000年以上の松の苗」「世界一大きくなる木」など、不思議な植物が植えられており、一つ一つの解説を見ながら、時間を滞留する人たちが多く目立ちます。


単に、にぎわいを、直接販売する空間や、人の多さ、イベントの回数などを通して考えるのみならず、こうした、何の変哲もない(一見にぎわいのない)外部空間に、人々を惹きつけるような価値を生み出し、その結果が、最終的にも持続性つながる、そんな外部空間の価値づけのあり方も、今後の都市では問われてゆく大切な要素かもしれません。




DAIKANYAMA T-SITEと代々木VILLAGE(その1) ~穏やかな商業再生~

近年、中低層の穏やかな商業再開発は、都心部でも多く見られ始めました。横浜市では、歴史的建造物でもあった、横浜松坂屋(6-7階建て)は、残念ながら解体されましたが、その後、なんと高さ半分の3階建ての商業施設(カトレアプラザ伊勢佐木)となったことからも、もはや、不必要な容積は、インセンティブにならない時代が到来してきています。
逆に言えば、不動産業としてではなく、商業の本質に戻って考えたならば、床の量ではなく、
最も商品やサービスが提供できる床のあり方が問われているのかもしれません。
そんな中、都心部でもいくつか興味深い事例が増えてきました。

一つは、エリアの都市空間を生み出したといっても過言ではない、ヒルサイドテラスに寄り添うように並んでいる、DAIKANYAMA T-SITE。いわゆる、「大人のツタヤ」を中心とした代官山のプロジェクトです。
大谷石の小さな垣根の先に緑の広場の奥に小さな空間と人の流れが・・・。


3連のTSUTAYAと電動アシスト自転車の店や総合オシャレカメラ屋さんなどの小さな店舗群によるその構成は、大体ざっと見ると容積率も50%くらいでないかと思えるほどのボリュームの中に、みちやにわが入り込んでいます。

代官山プロジェクトは、蔦屋書店のカルチュアルコンビニエンスクラブ(CCC)を中心にNTT都市開発の協力で進められ、『森の中の図書館』をコンセプトに、設計コンペが実施され、11の建築提案の中から、クラインダイサム・アーキテクツが選ばれ、RIA(アールアイエー)との共同での実施設計が行われたそうです。
また、アートディレクションは、原研哉さん、そのほか、施設全体のクリエイティブディレクター、ランドスケープデザイナー、写真家、人材採用やブランディングなど様々なクリエイターがかかわり、新多様な人材によるプロジェクトネットワークが想起されます。

お店に入ると、中央2階のラウンジでは、お茶しながら、建築系雑誌のバックナンバーをじっくりと読むこともできる、そして、その横をベビーカーが自由に通り抜けることもある、包容力ある空間です。iPadでメニューもバックナンバーも確認できます。

これまで、蔦屋と言えば、これ以前に、スタバと始めコラボした六本木や、駅前交差点にファサードも表現した渋谷、さらに遡れば、住宅地にマルチパッケージ型のゆとりある空間を生み出した馬事公苑なんかが印象的です。

この敷地のルーツを辿ると、本当のところは詳しくわかりませんが、
水戸徳川家屋敷跡地→村井五郎→朝倉家→日本交通公社→NTT猿楽町社宅及びノースウェスト社宅/社員宿泊寮→T-SITEなどがかかわっているようです。

そして、隣接する敷地には、、「代官山ヒルサイドテラス」がありますが、ヒルサイドテラスは、当時、周辺がまだ農地の頃に、旧山手通りを「ストリート」に、代官山を「まち」へと昇華させ、そこには、まだSOHOという言葉の根付く前から、複合型の都市建築が創出されていました。


朝倉不動産や槇文彦氏をはじめとする関係者の努力でゆっくりと育まれたその空間言語は、開放的な小さな外部空間を敷地内に取り込む空間構造や、民家(朝倉邸)や「塚」という歴史的資産の保全活用という形で周辺に波及しており、中庭や通りを取り込んだ開発、民家や蔵を活かした建物など、新旧を溶け込ませるその構造は、代官山中に浸透しています。


その遺伝子は、外部空間のあり方や、外壁部分の構成など、T-SITEにも反映されています。T-SITE自身、相当、ヒルサイドテラスへのリスペクトがあるようにも感じます。
ただし、ヒルサイドテラスは、ストリートの裏側や横側は、ちょっと弱い印象ですが、T-SITEは、敷地の境界・側面についてもデザイン的配慮は施されている印象です。普段は嫌われがちな駐輪もなんとなく絵になるような・・・。


一方で、都心部でありながら、駐車場を100台以上設けている点は、いろんなことを想起します。

長くなったので、その1は、終わり。その2へ。

2012年7月1日日曜日

シンポジウム「新しい都市の時代へ」

これからの都市について考えるシンポジウム「新しい都市の時代へ」が開催されます。
横浜国立大学都市イノベーション研究院の諸先生が参加します。
研究院長を司会にして、Y-GSA(Yokohama Graduate School of Architecture)の所属の
建築家の先生方により、都市の時代についてディスカッションが行われます。

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YCCスクール・シンポジウム
「新しい都市の時代へ」
http://www.y-gsa.jp/news/ycc.html

日時:2012年7月3日(火)18:00-20:30(17:30開場)
会場:ヨコハマ創造都市センター(YCC)3F(横浜市中区本町6-50-1)
登壇者:北山恒、小嶋一浩、西澤立衛、藤原徹平/建築家・Y-GSA教授
司会:梅本洋一/映画評論家・Y-GSC教授
主催:YCCスクール(横浜国立大学・横浜市立大学・横浜市芸術文化振興財団・横浜市)、横浜国立大学大学院 都市イノベーション研究院
※入場無料、予約制ではありません。当日先着順でのご入場となります。(200名)
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モノマチと2k540 ~徒蔵(かちくら)での取組み~

メイド喫茶に始まり、AKBやガンダムでも盛り上がる秋葉原の北東、線路をまたいだエリアは、「徒蔵(かちくら)」(御徒町:おかちまち~蔵前:くらまえ)と呼ばれる、近年にぎわう人気スポットです。

このエリアで、「モノマチ」(台東モノづくりのマチづくり実行委員会主催)という取組みが、年に2回ほど行われています。

革製品や鞄等をはじめとした町工場や卸問屋の集積するこのあたりには、近年、デザイナーやデザイン系企業も集まっており、こうしたモノづくり系企業やショップ、工房、アトリエ、デザイナーが参加する、 モノづくりのマチの体験イベントです。 今年は、5月25-27日に開催されました。3回目の今回は、参加企業・店舗数も72におよぶ大きなイベントとなっているほか、MAPをみると、飲食店も協力しており、まちにゆけばオレンジ色ののぼりが目印となっています。


ものづくりショップや町工場、アトリエをめぐり、さらに楽しくまちあるきするために、様々な仕掛け
が行われているようです。

例えば、デザインスタンプ集めたスタンプツアー。パスポートのようなノートにスタンプを押してゆきます。


また、いくつかの町工場やショップを巡り、オリジナルの商品を創るプロジェクトもあります。
私が参加したのは、まず、(1)革屋さんで革を選び、型抜きしてもらい、


(2)箔押し工場で、ネームを箔押し(金箔にしました)をしてもらい、


(3)雑貨屋さんで縫い付けてもらいトートバックの完成。


 これらとは別に、それぞれの店も自立して、体験やワークショップを独自で行っています(ただし、実費を各々払って参加)。

まちを巡るためのレンタサイクルもおしゃれに行われています(tokyobikeと連携)。



そして、これらの活動の核となっているのが、台東デザイナーズビレッジ。旧小島小学校の廃校跡を利用した、デザイナーの卵のインキュベーション拠点です。普段はそれぞれのアトリエや事務所となっており、入ることができませんが、イベントの日は、公開されます。


各デザイナーは、数年たつと「卒業」するようで、卒業したデザイナーが周辺に新たな店舗を構えるにまで成長していることもあり、地域活性化にも寄与しています。


また、周辺の高校ともコラボレーションして、オレンジのエプロンで、地図配り。

地域全体を挙げてのモノづくりのマチコラボレーション、今後の発展が期待されます。

また、さらに、JRの線路高架橋の下には、JR東日本都市開発による「2k540」というアトリエショップの集積するスポットがあります。ワッフルスラブ(丸柱に丸い受け皿のような丸板が上部を支える構造)が並ぶ不思議な空間に、モノづくりのショップ空間が並びます。こちらは、独立した販売が可能になった、さらに成長したデザイナーや企業が出店するようなスポットです。
様々な成長の受け皿が地域に根づいています。



そして、秋葉原。
かつての市場から、電気部品の集積、電気街、PC街、ソフトコンテンツ街からメイドやマニア街と、
内容は少しずつ遷移させながら、それぞれの時代の「究極」を追求するそのまちの様相は、各時代の究極を下敷きにしているからこその反映かもしれません。しかもマニアの象徴AKB劇場と一般の象徴ヨドバシカメラの共存がまた興味をそそります。