2014年12月29日月曜日

セルフビルドの遺伝子 高知

更新、大変遅くなりましたが、本年の仕事納め(納まってませんけど)は、
にぎわいづくりのヒント探しに、高知へ。

檮原で見つけた、電気屋さんの上に乗っかっている、
セルフビルドのデッキ?温室?秘密基地???
店主のおやじさんが、10年ほど前に築き上げた、名建築。
単管と木のハイブリッドなデッキに、開閉式窓。
風の影響を受けないよう、空気が通るようにあえてしているとのこと。
物干しに干し柿に、春にはデッキを広げてその上に盆栽・植栽などを飾ったり、
イルミネーションしたり、花火の日には、上に上がって、焼肉やBBQ。
雨水タンクもついていた。


ちなみに、檮原町は、隈研吾さんのデザインの歴史的変遷もよくわかる。


日曜市は、300年続く、大手筋での数百軒が並ぶ市場
(他の曜日他の場所で毎日市が行われているとか)。
早朝に軽トラで、フレームとビニール、台に売り物を持ってくる。
フレームはテント屋さんに手配したとか(お餅を売るおばあちゃん談)。
庇も深く、高さも低く、密なヒューマンスケールが生まれる。

高知の夜のグリーンロードの中央分離帯には、屋台が突如建ち並ぶ。
植栽帯の立ち上がりもうまく用いた檀上席もあったり、カスタマイズで
柔軟に屋台ができあがる。朝になるとサッパリときれいに。


かの有名な沢田マンション。
詳細は省くが、究極のセルフビルド集合住宅。時間の積層が、建築を築く。
ここでは、問題は問題ではなく、未来への足掛かりなのだと、勉強させられる。


旧土佐山村は、冬で野草は出てないし、ソフト的な情報がないとその価値はわからないが、
かつては、集落住民自らが立ち上がり、集落経営を志し、ホテル開発を考え、
おもてなしのために野草整備や諸々をしたと聞いている。
近年は、新たな動きが入り込んだため、地元からは、?が出ているようだが、
当初の地域の想いが受け継がれることを望みたい。


蔵には水切り瓦と呼ばれる数列の薄い瓦庇がついている。
台風や雨風から漆喰壁を守るための所作。 

本州を見ずに、南に広がる太平洋に対峙して暮らす土佐のまち。
自分たちで自分の暮らしは組み立てる、セルフビルドの精神が、
多様性のある魅力を生み出しているようだ。

2014年10月3日金曜日

「次世代のインセンティブ」 ~日本建築学会研究協議会~

少し前になりますが、去る9月13日(土)、
日本建築学会大会(神戸大学)の中で、都市計画部門研究協議会

「地域ガバナンスと都市デザインマネジメント -次世代のインセンティブ-」

が開催されました。

現在、建築学会都市計画委員会の幹事を仰せつかっている関係で、
今回の研究協議会の企画は自分で担当いたしました。


***
1960年代に日本に導入されたといわれる、都市を魅力的にするための
「都市デザイン」手法の中でも、都市を誘導する手法の一つとして、

「インセンティブ」という、
例えば、容積率を緩和する代わりに、公共貢献や空地の確保、
街並みの統一を図るという誘導手法(いわゆる「アメとムチ」手法)が用いられてきましたが、

近年、大都市では、「都市再生特別地区」(都市再生特措法)などにより、公共貢献として
認められる内容が非常に多様化した一方、何が公共貢献かわからなくなりつつあります
(ムチの無効化)。

一方、地方都市では、そもそも、開発圧力がないので、容積率緩和をアメとしようにも、
アメにもならない(不要な)状況が起きています(アメの不要化)。

こうなってくると、かつてのインセンティブ手法が機能しなくなってくる中で、
容積等の緩和の次の、次世代のインセンティブ手法とはどのようなものになってゆくのか。
そもそも、「インセンティブ」という言葉は、「誘引」であり、都市に人や活動・投資を
惹きつける「誘引力」とはなんなのだろうか・・・。

ということを考える会でした。


主題解説としては、

(1)これまでの都市デザインマネジメントの潮流について出口敦先生(東京大学)
(2)行政の都市デザインマネジメントの到達点と課題について桂有生氏(横浜市)

に整理頂いた上で、次世代の可能性として

(3)地域ガバナンスを構築して、地域で自律してゆく、銀座ルールの事例(竹沢えり子氏)
(4)公共空間を「使いこなす」ことで価値を創出してゆく、水都大阪等の事例(忽那裕樹氏)
(5)「リノベーション」が地域再生たりうるかということで、松村秀一先生(東京大学)

にお話頂きました。

その後、コメンテータも交えたディスカッションでは、

「マクロの最適解とミクロの最適解の調整」の必要性について、もしくは、
縮減時代において、むしろコンパクトに縮退を行うことに
向かうような「シュリンキングのインセンティブ」(出口先生)、

行政の役割がリードする立場から、押し上げる立場へと変わる、
「名フォワードから名ボランチへ」(桂さん)、

銀座は、街並みというよりも「街路空間への合意」を図っていたということと、
これに対する「俺の○○」の行政の話(竹沢さん)、

「小さなまちづくりと大きなまちづくり」の関係性の話、
(高速道路でこけしと目が合う話も面白かった)(忽那さん)、

清水義次さんの主張する「家賃断層帯」の話や、
「場」を生み出す産業化の話(松村先生)、

そして、

「つくる都市計画から使う都市計画」へ(小浦久子先生)、
「マネジメントを都市デザインとして評価する際の関係者の多元化」の話(中井検裕先生)、
「絶対に守る」ものに対しては、きちんと「キャップ」を設ける話(有賀隆先生)、

などなど、いくつか、これからを考えるヒントとなる議論が行われました。

これらを基に、今後の街のマネジメントの仕方について、より深めていきたいと思います。

2014年9月21日日曜日

シャレットワークショップ【水都大阪】

去る9月5日から9日まで、日本建築学会、「住まい・まちづくり支援建築会議」が主催する、
シャレットワークショップが行われました。

シャレットワークショップとは、元々は、「シャレット」=フランス語で荷馬車という意味で、
フランスの建築教育の殿堂、エコール・デ・ボザールで、設計課題の提出締め切り前に、
図面を荷馬車に載せて運ぶくらい、ギリギリでやっていたことに端を発し
(いつの時代も変わりませんね)、
専門家等が集まって、短期に集中して課題を解決する提案を行う取組のことを指します。
今回のシャレットワークショップは、日本全国の建築・都市計画・まちづくりを学ぶ学生が
集まって、5日間合宿で提案を行うものです。

今年度は、「大阪・水都のまちづくりデザインを考える」ということで、水都大阪でも、
特に、これからの伸びが期待される、中之島の西側、「中之島GATE」と呼ばれる場所が
舞台となって、提案が行われました。

まずは、水都大阪パートナーズにて、水都大阪の、水辺を活用した様々な取組みにチャレンジ
している、コンサルタントの泉さんのレクチャーとまちあるき、
そして、関西大学の岡先生から、大阪のまちの成り立ちと水都大阪の関係についてお話
頂きました。

中之島の西側は、かつて、海と陸の接点となる、まさにGATE。
江戸時代も安治川口は、大きな船から小さな船に乗り換える河岸拠点でもありました。
明治時代には、居留地や庁舎もあった、外国との接点でもあったこの地。

ここに新たなどんな未来が描けるでしょうか。

中之島GATEにある、河道跡の小さな埋め立て地、サウスピアでは、イベント的活用を経て、
劇団の演劇、そして、間もなくファーマーズマーケットができる予定だそうです。

さて、そんな5日間で行われた、学生さんたちの提案に関する感想です。


グループA「View Hab」

剣先と呼ばれる、中之島の西岸を周辺の動線も含めてリ・デザインする提案
剣先から川の向こう(西側)に見える夕陽とマジックタイムを一人占めできる
堪能空間の挿入とモビリティの様々なハブを生み出せるのは、面白かった。
それぞれの空間のデザイン化と、モビリティ同士の(モビリティとモビリティとの
接点の快適なアクセスと空間か)をもっと具体的に考えた時の
ノードデザインとサーキュレーションデザインができるとよかった。

グループAB「日が昇るまで」
卸売市場と住友倉庫に目を付け、このエリアのメイン時間帯である夕方から朝方を
楽しむための滞在拠点を検討する案。
大規模な重厚な倉庫建築にホテルとして部分挿入するときに、どのような空間が
挿入できるかがデザイン化されるとよかった。
コンテナ空間・水上活用ももっとこだわった、活用・増築・リデザインが見られるとよかった。
タイムシェアリングの概念が、以前、横浜の卸売市場でコールハース
(クールハースというと世代がバレる・・・笑)が提案したものでは、空き空間(時間)に
新たなプログラムを挿入したが、「ピークの時間」をさらに使いこなす発想が新しかった。

グループB「」


卸売市場のある対岸とサウスピアを堤防と橋でつなげてサーキュレーションを獲得する案。
ターレットトラック(卸売市場内を走る特殊車両)のデザインも使い方も対象も
プログラムももっと多様にデザインできるとさらによかった。
全体のサーキュレーションと空間デザインと活動をどのように
統合化できるかがわかるとよかった。。

グループC「異知場」


中央卸売市場の再編を含めた再生提案。屋上や護岸側部分を用いて市民に開く。
もっともっと市場を使いこなせると面白い。
朝4時からやっている喫茶店、クリニック、社会科見学の赤帽のこどもたち、
市のまちなか観光課…様々なものが混在した空間。
サーキュレーションも様々なものが様々な速度でうごめくこの市場。
こちらは、どちらかというと、コールハース的ではあるが、
だからこそ、もっと大胆に市民に開いてもよかったのかもしれない。
裏の引込線や、いくつかある仲卸業者なども用いて考えることもあったかも。

グループD-1「川口ピア」



新たな都心の水辺と倉庫等空間をふんだんに感じて住むこと
についてもっと迫れるとよかった。
最終的には護岸デザイン+倉庫に行きついたが、
この接点に迫ることが、将来の都市にどのように影響があるのか。。。

グループD-2「津々浦裏」


かつての河岸、島、旧居留地とそのころの水路(川)に着目して、
現代の出島的な空間(しかも無堤)を挿入。
ここまで水辺を改編したときに、その分、国際的なGATEとして負けない、
クリエイティブでグローバルで多様な空間挿入ができればよかった。
その意味では、もっと大きな視点・位置づけがあるとよかった。

***
そして、ワークショップ中に書いた、落書きの足跡・・・





 

 

 

2014年9月15日月曜日

「くりらぼ多摩川」発表

しばらく、ブログを更新しておりませんでした。失礼致しました。

去る9月12日より14日まで、神戸大学にて、日本建築学会大会が行われておりました。
そこでは、様々なプログラムが企画されており、いくつかに対して、また後ほど
ご報告したいと思いますが、その中の根幹となっているのが、学術講演会および
建築デザイン発表会による、各学会員の研究・作品報告です。

その中で、今回、「建築デザイン発表会」におきまして、大田クリエイティブタウン研究会の
プロジェクトの中から、創造活動拠点である、「くりらぼ多摩川」についての発表を
行いました。

大田の町工場を巡る状況、
モノづくりのまちづくりを総合的に行うクリエイティブタウン構想
くりらぼ多摩川に求められている機能(創造活動、ワークショップ、ツアー窓口、ほか)
くりらぼ多摩川改修の状況(旧工場棟と旧事務所棟のリノベーション)
運営状況まで、4分で話すというつめこみ気味の発表でした。

建築デザイン発表会自体は、現場の建築プロジェクトや卒業・修士設計なども含めて
建築デザインに関わる報告を実現したかしないか、学生か社会人かも問わず一緒に
報告し合う会です。

こちらの建築デザイン発表会は、テーマごとにカテゴリーに分かれ、発表質疑のほか、
グループディスカッションが行われ、その中から、優秀発表が選ばれるのですが、
このたび、首都大学東京の川原先生・岡村先生、当研究室の修士課程阿部さんとともに
発表した上記の「くりらぼ多摩川」の発表が、優秀発表に選ばれました!
このセッションをコーディネートしてくださった貝島桃代先生から、直接頂きました。



これらも、大田クリエイティブタウン研究に携わってくださる、大田観光協会、各大学関係者、
をはじめとするみなさまのお蔭です。

大田プロジェクトも少しずつ、前に向かって進化してきています。
今後も、いろいろと成果を積み重ねていきたいところです。




2014年5月17日土曜日

みやぎボイス2014 ~復興住宅のこえ

去る、2014年5月11日(日)、せんだいメディアテークにて、宮城県の被災地復興について
被災地支援をしている専門家や地域住民、支援団体などが集まって考える、
「みやぎボイス2014 」が、JIA主催で行われました。


第二回である今年は、「復興住宅のこえ」ということで、仮設や復興公営住宅、防災集団移転事業など、すまいに関わる課題についてA:平野部、B:半島部、C:市街地に分かれて議論されました。

まず会の初めには、平野部、半島部、市街地からの復興状況報告がありました。

(1)岩沼市報告:玉浦西地区の防災集団移転事業の事例
(2)東松島市報告:東矢本駅北地区まちづくり整備協議会の事例
 →丁寧な集団移転事業の展開と実践
(3)北上まちづくり委員会:新古里(にっこり)団地の事例
 →公共施設・スポーツ施設等を含めた計画の再編
(4)コンパクトシティいしのまき・まちなか創生協議会
 →まちづくり会社(街づくりまんぼう)などを交えた、プロジェクト型の連鎖的な復興再生活動

その後、上記3つのテーブルに分かれて、それぞれ議論が行われましたが、私は、
C:市街地テーブルのコーディネータ(議論をまとめて報告する係)を仰せつかりました。
このテーブルは、事実上、石巻市のまちなかに関する議論でした。

以下、市街地での議論を掲載します。

■各市街地は、震災以前から中心市街地活性化策に取り組んでいた(が苦しんでいた)。
 旧北上川の「川湊」を基にして発展した石巻にとって中心市街地とは、「土地の記憶と文化、イン 
 フラも重層している地域」であり、新たにまちをつくるより、中心をカスタマイズした方が、コスト的
 にも優れているとも考えられます。まちにある文化は新たに作ることができないという指摘も
 ありました。
■一方で市民自身はそういったまちの将来への関心がとても薄かった。被災によって、一部の市民 
 は、まちの方向性を考えるということに向かい始めた。

という背景がありました。一方、住宅(仮設や移転、復興公営住宅、すまい)という観点から見ると、

被災地では、集団移転の事業でも、「集落」ではなく「団地」、市街地でも、「まち」ではなく「いえ」をつくっている。そこで、

  まちなか居住(すまい)ではなく、まちなか「暮らし」が必要

だという指摘がありました。職業の問題、地域包括ケアなど、高齢者の安心がパッケージでそろっていること、公共施設などを始めた全体の配置、そして、高齢者と若者のバランス良い住まい、こうしたものが地域に必要とされています。

一方、課題としては、高齢者の問題があげられました。高齢者は、新しい場所への(移転に)期待する一方、住まいを移せば移すほど、周辺と関係性を構築できないため、ケアが必要となる。
また、近年では、まちなかスーパーに、健康もかねて歩いて通う高齢者も増えている。
あるいは、石巻で行われている若者・外部の視点で行うイベントが、まち自身を「鍛えている」という指摘もありました。

そうした議論のまとめてとして、住まいしかないまちはまちとして成立しうるのか、ましてや中心部の特徴は、いろんな人、いろんな機能の集まる、「多様性」にあるのではないかということで、次のピリオドのテーマは、

「まち(中心市街地)の多様性(=魅力)」 となりました。

まずは、石巻市で行われている、小さな再生の積み重ね事例として、
(1) ISHINOMAKI2.0が行っているお茶屋二階のシェアハウス(2.0不動産)
(2) 松川横丁ハウス:3軒で行う小規模共同建て替え+シェア
(3)空地マネジメント:空き地をいかに活用するか(街づくりまんぼう)
(4)ご近所再開発  :小さな単位で行う再開発(西郷真理子氏・まちなかの再開発組合)

の紹介がなされ、こうした再生の連鎖の中にしか答えはないという意見がある一方、

積み重ねを束ねる必要性
(1) 各プロジェクト同士(官民・民民)の情報共有の場づくり
(2) テーマの明確化(例えば、「食」をテーマにして重ねてゆく)
(3) ある程度の方向性を統合する、マスターコンセプトのようなものの必要性
(4) どのようなプロセスでこれを実現してゆくか

も指摘されました。

さらに、木造建築の普及により、地元産材の利用のみならず、雇用等にも地域性を付与できる。など、地域経済の循環についても議論がなされました。


また、他のテーブル、会場からは、「中心市街地の衰退の要因は、周辺農村の衰退にある」というご指摘もあり、つまり、これまで、共存関係であった、中心-農村であるが、農村が衰退するに従って、中心部の機能(病院やスーパー)などを呼び寄せてしまい、取り合いの敵対関係になってしまった。その結果、中心も中心を維持することが厳しくなってきているという視点です。まさに、「中心」とは何か、周辺との関係をどのように構築するかは、今後考えてゆく必要がありそうです。


 





2014年5月10日土曜日

レクチャー「郊外まちづくりを俯瞰する」

横浜国大大学院都市イノベーション学府、「環境都市デザインスタジオ」は、今年度、

「創造的郊外」

というテーマで、相鉄いずみ野線沿線の郊外エリアを対象にしていますが、

その中で、5月9日、スタジオ内のレクチャーシリーズ第一弾ということで、
「郊外まちづくりを俯瞰する」という講演会を開催しました。

第一部は、第一線で活躍され、横浜にも精通されている3名の都市計画コンサルタント
の方々に講演して頂きました。


 
都市環境研究所の高鍋さんからは、北部・西部・南部と分かれ状況が異なる点や、
駅に人口が集まりつつある(たまに駅前が急速に下がっているところもある)といった、
横浜市郊外の全体状況と、
現在進められているたまプラーザ・東急多摩田園都市の取組みと、そこで活躍する
人たちの像について、

地域計画研究所の内海さんからは、横浜市郊外で進められている農的空間を活かしたまちづくり
に関して、住宅と農地の近接性や、様々なプレイヤーが関わり始めている状況について、

山手総合計画研究所の菅さんからは、港北NTや旭区グリーンロード、和泉川など、
いくつもの郊外の魅力ある空間を生み出すためのリサーチや実践についてお話し
頂きました。

第二部では、これに加えて、横浜市の秋元さんをコーディネータとして、
4人で今後の郊外についてディスカッションが行われました。


郊外は、英語では「suburb」といいますが、まさに「Sub-Urban」、都市のサブ、ベッドタウン
として生まれてきたということを背景に、これからは、サブではない郊外となりうるか?
も一つの論点でした。

高齢者の中でも8割いるといわれるアクティブシニア層や、少し子育ての落ち着いた女性など、
潜在的な力を秘めた人たちが(地域づくりの)「働き手」として活躍し始めているというたまプラーザでの話、

逆に新興住宅地で起こる、地縁コミュニティ(自治会)とテーマコミュニティ(NPO)のズレの問題、

工場や農地が近くにあることで、新たなパート先の存在が複合型ライフスタイルを生む可能性、

6次産業や食、エネルギーなどを媒介にしたつなぎ方の可能性、などが議論されました。

第三部は、スタジオで進行中の資源リサーチの中間的発表。

チームごとに、住宅の建て替わり変遷を細やかにプロットした結果を示したり、
農業専用地区の中にあるアドホックな現状をヒアリングした結果報告をしたり、
様々な報告がなされました。


今後の作業としては、どんな新たな郊外を創造したいか、ビジョンを持ちながら調べる、
いや、むしろ、想像的(imaginative)な視点での調査が必要とされるかもしれません。

高度成長期以降に、計画的もしくは非計画的に急速に拡大してしまった郊外住宅エリア。
そのため、様々な技術は取り入れつつもやや画一的、あるいは無秩序な状況が進展していますが、その前の状態、あるいはこれからのヒントを積み重ねることで、
新たなカスタムが考えられるかもしれません。

2014年4月18日金曜日

モノづくり交流会

昨日4月17日、東京のモノづくりに関わるイベントや取組みを行っている
各地域の人たちの集まる、「モノづくり交流会」が開かれました。

数年前から、徒蔵(御徒町~蔵前)エリアで、「モノマチ」と呼ばれる
モノづくりのまちづくりイベントを主催する、台東モノマチエリアのみなさんの
主催で、この会は行われました。

台東区のこのエリアには、「台東デザイナーズビレッジ」(通称デザビレ。旧小島小学校を改修
して使用。ここは、関東大震災後の震災復興事業において、小学校と公園が
 一体となって整備された、52の復興小学校+復興小公園の一つ。)
と呼ばれる、革製品や、鞄、靴、ファッション系のクリエイター・デザイナー
インキュベーション施設があり、「台東モノマチ」は、この施設の施設公開を契機として、
デザイナーズビレッジのマネジメント行う、デザビレの鈴木村長を中心に始まり、
地元のモノづくり関係者、商店など諸々を巻き込んでどんどん拡大して発展したイベントです。

そして、このモノマチメンバーを中心に、様々な都内を中心としたモノづくりのまちづくり
ネットワークが広がりつつあり、我々が行っている「おおたオープンファクトリー」をはじめとした
「大田クリエイティブタウン研究会」(クリ研)にも、お声がかかったため、この会に参加しました。

この会には、モノマチやクリ研のほか、

A-ROUND (台東区:革や鞄職人も多い、浅草エリアでのモノづくりめぐりイベント)

スミファ(おおたオープンファクトリーをヒントに、墨田区の幅広いモノづくりを体感する
     オープンファクトリーイベント。廃材を魅力あるモノに変える配財プロジェクトも。)

アスメシ会(荒川区:若手経営者が考える「明日の飯の種を考える」会)

葛飾区町工場物語(葛飾区:玩具のモノづくりのまちが、「マンガ」で魅力を伝える)

ものこと市・ものこと祭り(世田谷代田のシャッター商店街の前で行う集団行商?)

などなど、たくさんの魅力あるモノづくりのまちづくりを行う諸地域の方々が一堂に介しました。

そのほか、経産省の方や、マーケティングやプロモーションを行う会社の方なども、
交えて、楽しく、各地域の活動を紹介しました。

今後、日本全国のモノづくりのまちのネットワークができて、
この魅力ある技術と資源が発信され、
「価値づくりのまちづくり」が広がることを期待します。




2014年4月11日金曜日

環境都市デザインスタジオS2014開始。

横浜国立大学大学院都市イノベーション学府建築都市文化専攻では、
大学院の中でも、実践的「スタジオ」教育が行われています。

建築系では、建築の構造に関するスキルを高める「建築構造工学(SE)スタジオ」
歴史や計画に関わる「建築理論(AT)スタジオ」とありますが、都市環境系では、
「環境都市(UE)デザインスタジオ」を開講しています。

今年度も、「環境都市デザインスタジオ」が始まりました。



今年度のテーマは、「創造的郊外」。
横浜市・相鉄HDさんとも連携して、相鉄いずみ野線沿線の郊外まちづくりを考えます。

横浜市は、高度経済成長期、あふれる都市人口を吸収する、いわばベットタウンとして
整備された郊外住宅地が多数存在していますが、縮減時代にさしかかった現在、
これらをどのように再編・継承・縮小してゆくかが問われています。

これまで、横浜に豊かに存在した郊外の谷戸、丘陵地を削ってつくってしまった
郊外住宅地、今度はここに人がいなくなるようになってしまったら…、
あるいは、もしも、ここに次世代型の住宅地を再編するとしたら、既存の自然や地形は
どうインテグレイトできるのか。

昭和30年代~特に50年代を中心に形成された、ある程度住宅地形成理論の実践が
行われた住宅地を再評価(よくも悪くも客観的に)し、次世代へのあり方を考える、
(そこには、様々な住宅地形成技術が積み重ねられています)、

あるいは、市域の1/4を市街化調整区域として保全してきた横浜市において、
これまでは、「抑制区域」として守るだけだったこのエリアを
どのように「(市街化せずに)使う」のか、

あるいは、低炭素社会に向けて、パッシブエネルギーやそのマネジメントによって
どのように次世代型の市街地形成ができるのか、期待されます。

ぜひ、これからの都市生活、都市社会に一石を投じつつ、
実践にも結びつく、豊かな提案が出てくることを期待するばかりです。

4月11日(金)には、現地見学会を行いました。



それぞれ、住宅地は異なるようで微妙な差異があります。

歩行者専用道やフットパス、二段階植栽といった住宅地形成技術、
駅前の協調新築?であった山本理顕さんの作品でもある緑園都市駅前の諸建物
こうしたエレメントも魅力を放っています。
 
一見同じように見えるけれど、微妙に異なる住宅地のあり方、再編に向けてのヒント、クリエイティブな解法…エリアリノベーションのあり方・・・今後、一緒に考えていきたいと思います。
 
 
 

2014年4月5日土曜日

Project List 2014

さて、諸事情によりしばらくお休みしておりまして、申し訳ありませんでした。

今年度予定のUrban Design Project & Research Listです
(全てではありません)。

1.■「大田クリエイティブタウン研究会」(東京都大田区)【2009~】
 首都大学東京・東京大学・横浜国立大学・大田観光協会を中心にして、
 「モノづくりのまちづくり」に関するプロジェクト活動を進めています。
 超高度なモノづくり技術を内包しながらも経済状況により将来像の見えない中、
 都市の「価値」をクリエイトする新たなまちのあり方を考えています。

 ▼おおたオープンファクトリー:年一度の町工場一斉公開イベント 
 ▼「くりらぼ(クリエイティブタウンラボ)多摩川」運営:町工場を改修した創造活動拠点
 ▼クリエイティブタウンデザインセンター設置検討など
 ▼モノづくりのまちの不動産ストック研究・工場町家研究・工場アパート研究

 詳しくは、

  http://www.comp.tmu.ac.jp/ssm/mono/openfactory.html

 へGo!

2.■ストリートマネジメントを考える(みち-まちプロジェクト)
1)■復興市街地のストリートマネジメント(石巻市市役所大通り)【2013~】
 被災地復興の事業として行われる、中心市街地の土地区画整理事業・街路拡幅に伴う、
 街路・沿道地域再生、空地マネジメントの検討です。
 昨年度は地域の方々と「まちづくり手帖」を作成しました。今年度はこれを受けて、実際の
 空間整備や活動展開の段階に入ります。

2)■旧東海道の景観・にぎわいづくり(IN BETWEEN CITY PJ:横浜市保土ヶ谷区)【2013~】
 横浜国立大学のおひざ元、保土ヶ谷区は、都市でもない郊外でもない、「間にある都市」。
 しかし、そんな保土ヶ谷ならでは魅力はここそこに眠っています。中長期的には、保土ヶ谷区
 のビジョン策定を見据えつつ、今年度は、旧東海道のにぎわいづくりを検討します。
 地域実践教育研究センターとともに進めるプロジェクトです。
 ▼保土ヶ谷西口商店街(旧東海道)での「ほどわごん」設置検討
 ▼地域資源の発掘と再活性化のための「ほどほどマップ」「がやがやツアー」の検討
 などを検討中です。

3)□「くらにわ」プロジェクト(福島県喜多方市)【2005~】
 磐梯山の奥、飯豊連峰に囲まれた会津盆地にある蔵とラーメンで著名なまち。
 こちらも2005年からいろんなまちづくり活動のお手伝いをしてきました。
 市街地の中心ストリートふれあい通りや小田付蔵通り近辺の「くらにわ」検討や
 「みち」と「まち」の関係について考えてゆきます。

4)□松山市のあるいて暮らせるまちづくり(愛媛県松山市)【2011?~?】
 「あるいて暮らせるまちづくり」を標榜して、コンパクトな都市像を打ち立てる松山市の
 まちづくり戦略をお手伝いしています。今年度はお休みかも。

3.■郊外住宅地の未来を考える(横浜市・相鉄HD)【2013~】
 相鉄いずみ野線沿線において、縮減時代における新たな郊外都市ビジョンを検討し、
 民間企業(相鉄HD等)とも協働して、新たなプロジェクトを検討します。
 新たな住宅地デザインの再編、農的空間の暮らし、そこでの環境ライフなどを考えます。
 大学院「環境都市デザインスタジオ」とも連動。

4.■「中山間地域の再編:地域マネジメント計画づくり&実践」(岐阜県高山市)【2008~】
 毎年、少しずつテーマや場所は異なりますが、いろんなお手伝いをしています。
 H22年度は、荘川町一色惣則地区(荘川式の合掌造りや豊かな水のある農村集落)
 H23-25年度は、上宝町長倉地区(「天空の城」ともいうべき斜面にはりつく農村集落)を舞台に、
 持続的な地域のあり方を考える、地域マネジメント計画を、地域の方々と考え、近年は、
 その中でも、地域の方々に人気のあった「うちあかり」という取組の実践に向けて動きました。
 今年度は、地域計画のあり方モデル研究と、移動販売に関する検討を考えています。

5.□岩手県九戸郡洋野町(旧大野村)【2003~】
 「芝棟」と呼ばれる草の生えた棟をもつ茅葺民家が70棟近く残る中山間地域です。
 2003年から、地域づくり活動のお手伝いをしています。
 昨年度は、本学の建築史建築芸術研究室とともに、
 壊れてなくなってしまいそうな茅葺を修復するための技術を取り戻すための講習会を実施。
 今年度はまだ未定です。。。

【研究】
A. 大田区景観まちづくりに関する制度支援関連研究
→これに関連した、景観計画・景観条例等制度に関連する「表彰制度」の実態と効果

B.Open City研究
→建築をまちに「開く」取組みに関する研究
→建築・都市を一斉に公開するオープンシティイベント研究【季刊まちづくり37号参照】


C.国内外の創造都市研究

D.「地域ガバナンスと都市デザインマネジメント」資料収集

ということで、今年度もよろしくお願いいたします。

2014年3月13日木曜日

石巻市「市役所大通りまちづくり手帖」



昨年(2013年)の5月末より、東北大学の姥浦先生、地域のまちづくり会社
株式会社街づくりまんぼうとともに、石巻の復興まちづくりの中でも、
「市役所大通り」と呼ばれる通りのまちづくりのお手伝いをしています。

市役所大通りは、石巻駅からまちなかをつなぐメイン商店街である
立町商店街から一本曲がり、アイトピア通りという通りの先、
(かつてはその先に市役所があったのですが、現在は、移転しています)、
日和山へと向かう道の途中にある通りです。

これまで、道路の幅が10mであったところを、
17mの、避難のための機能も有する道として拡幅し、
周りと合わせて土地区画整理事業を行うというものです。

こうした、復興を目指した新たなまちづくりを進める上で、
地域の商店会のメンバーや地域の方々、
街づくりまんぼう、市役所等が一同に介して、
まちの将来像と、それに基づくみちづくりとまちづくりの
指針を話し合うというものです。

はじめは、みちづくりのまちづくりの事例紹介(2013年6月)、


将来像に関する話し合い、


 アイデアカードを用いたイメージ共有と投票(2013年7月)、


 動く模型を用いた、みち、まちの空間的な将来像の共有(2013年8月~)、


実際のみちと沿道にモックアップ(原寸大)をつくってみての確認…(2013年11月)
などをしながら、委員会で議論を重ねて、

そして、最終的に、「市役所大通りまちづくり手帖」という冊子として、
まとめました(2013年12月)。



なかなか、見えてこない、まちなか復興まちづくりのイメージに対して、

小さな地域ではありますが、地域とともに共有ができ始めています。

現在は、これを受けて、次の段階として、具体的な広場とか、
みちとか、沿道がどのようにつくられていくのか、
検討を始めている最中です。
特に、地域にできるみちと小さな広場や色彩などについて話し合っています。


あと、そもそも、もう、市役所は通りの前にはないので、新たな通りの名前も検討中です。

復興という大きな事業が分野別に進みはじめている中で、
これらが地域の中の魅力づくりの中にうまく落とし込まれる、
地域が様々な分野や事業をつないでゆく、そして、安心安全も備えた魅力的な地域に…、
そんな地域づくりになるといいと思います。


2014年2月16日日曜日

おおたオープンファクトリー2014

さて、以前の投稿で、台風のために中止となり(10/26)、リベンジすることをご報告した、
「おおたオープンファクトリー」が、2月15日に開催されました!

前夜から当日朝にかけて、大雪でしたので、開催自体も危ぶまれましたが、
一部予定のイベント(ツアー等)は中止としましたが、工場のオープンや、
拠点でのワークショップやトークイベントは開催いたしました。

足下のお悪い中で、わざわざ足を運んでくださった皆様、
本当にどうもありがとうございました。

前日(2/14)には、NHK「ゆうどきネットワーク」にて数分間、
ホワイトテクニカ(町工場)の白石さん、小野製作所の小野さんとともに、
くりらぼ多摩川で準備をする学生が生放送で中継されました!


そして、事前準備は、しんしんとゆきの降り積もる中、深夜まで及びます。



そして、翌朝、一部交通機関の乱れもあり、準備に間に合わないスタッフも。


当日、雪から雨になり、雪と水浸しの道路で、お越しの方も大変だったと思います。
午前中は、雪かきに精を出して、天気のよくなった頃合いには、お客様が
増え始めました。

私は、その中でも、拠点の一つ、「くりらぼ多摩川」におりました。
数年前まで稼働していた町工場跡を改修した場所で、NHK朝ドラ
「梅ちゃん先生」の安岡製作所の撮影で用いられた機械(旋盤・フライス盤)も展示されています。


午前中から、「くりらぼワークショップ」と称して、
下町ボブスレーのペーパークラフト製作、午後には、すみだで活躍される
「配財プロジェクト」のメンバーによる「配財ワークショップ」で、廃材を用いたハンコづくり。
雪の中、集まってくださった皆様、どうもありがとう!


 
そして、くりらぼ多摩川の正面では、今回企画として「くりらぼ・カフェ」を実施。
醍醐ビルさんのご協力により、素敵なスープや焼き菓子、パテなども。
お客様がたくさんお集まりくださり、大盛況。


中には、松葉杖を突きながら、大阪から来てくださった方や、
交通機関の乱れに巻き込まれながら、和歌山から7時間をかけてきてくださった
方もいて、感謝の限りです。

完璧なリベンジとはいきませんでしたが、なんとか皆様のおかげで
三回目のオープンファクトリーもやり遂げることができました。

普段はなかなか触れられない、職人さんとのふれあいや、技術、
そして、そんな魅力集まる街の空気を感じ取っていただけたなら、これ幸いです。

将来的には、「JAPAN OPEN FACTORY DAY」なんてことで、
日本中で町工場が公開されるといいな、なんて夢も抱きつつ、
これからも活動していきたいと思っています。