2013年6月1日土曜日

『現在知 Vol.1 郊外 その危機と再生』

三浦展・藤村龍至編『現在知 Vol.1 郊外 その危機と再生』(2013年 NHKブックス別巻)
を読了しました。

少子高齢化・人口減少時代において、
「郊外のリ・デザイン」における現状と可能性について、様々な方々の
対談や論考を通して述べれらています。

オープニングは、編者でもある三浦展さんと馬場正尊さん、水無田気流さん、速水健朗さん
の対談です。各自の郊外体験、子育ての体験や知見を基にして、都心と郊外の関係から、
郊外のあり方について語られています。
スポーツ施設などの郊外化により都市の楽しみを郊外でも獲得できつつある
「都市化する郊外の可能性」と、しかしながら、結局郊外化(パッケージされた
消費ショッピングモール)仕掛けている都市化した郊外等の議論が興味深いものでした。

そのほか、多摩ニュータウン、ユーカリが丘、団地でのコミュニティ・ビジネス
たまプラーザのコミュニティ・リビング・
都市計画家水谷頴介氏のポートアイランドやシーサイドももちでの実績など、
興味深い実績や事例に関する論考のほか、

社会学者上野千鶴子さんや、経済に詳しい根本祐二さんとの対談など、
興味深い論考が続きます。

なかでも興味深かったのが、
「商店街はなぜ滅びるのか」を出版された新雅史さんの論考と、
戸建住宅地を研究されている九州大学柴田健さんの論考です。

新さんの論考では、

郊外だけでなく、商店街も均一化は免れていなかった点、初期ロードサイドでは、必ずしも都市と郊外の関係性までは変えていなかったが、トイザラスやイケアは、まっさらな「郊外の外部」(何もない場所)に立地し、「都市→郊外」の逆流パタンを産んだ点、実は、都心部の商業も、①規模の巨大化、②ショッピングモール化、③顔の見える関係性を求めており、都心部と大規模商業との本質的差異がなくなりつつある点、一方で、郊外は閉じられてシェルター化している点などが指摘された上で、移動とコミュニケーションが欠落している郊外住宅での、「二重化」(二地域居住化)や、コンビニ(コンビニ化)が語られています。

柴田さんの論考では、

重松清『定年ゴジラ』の架空戸建ニュータウン「くぬぎ台」(横浜には同名の集合団地が実在しますが…)の話をはじめに、「マイホームパパの同質性を保つ=勝ち続けている」戸建ニュータウンは今や、高齢化とパラサイトによる取り残された街へと変化している点などを指摘しつつ、
実際に、中古リノベーションの発展や、住宅地の内側に個人店舗(カフェ)が増加してゆく様子
(珈琲のこだわりが高じたセルフビルドカフェ、陶芸ギャラリーカフェ、積み木専門店、自転車専門店)などと、そこで行われる、①セルフコンバージョンによるこだわり空間、②隠れてつながる、③居心地の良い場所などの可能性、鎌倉湘南による人気カフェエリア街に生まれた、自治会とは異なる新たなネットワーク型コミュニティ、そして、妹さんがそこの暮らしているうちに、カフェに出入りしながら、ネットワークで創造的起業してゆくプロセスが非常に面白いものでした。

現在、大学院のスタジオ(「環境都市デザインスタジオ」)で、横浜の郊外住宅地を対象にスタディを進めていますが、ヨコハマでは、どんな郊外をリ・デザインできるでしょうか。

かつて、トーマス・ジーバーツ氏により「間にある都市」(都市と郊外)という言葉が用いられた、都市でも郊外でもない場所。何もない場所に、何があるでしょうか。





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