2013年7月1日月曜日

コレヨコ(これからどうなるヨコハマ)again

横浜の創造界隈の拠点の一つであり、様々な創造活動を発信し続ける、BanART。
このバンカートで数か月単位で開催される「BanART School」の一環として、

「コレヨコ(これからどうなるヨコハマ)again」

というスクールが、BankARTのリーダー池田さんと、建築家佐々木達郎さんを主催として
行われています。
そこでは、毎週1回ずつ集まり、全7回にわたるシリーズレクチャー&ゼミです。
第一回は、元横浜市職員で、ヨコハマの都市形成をまとめた名著、『港町・横浜の都市形成史』
の編纂にも携わられた)石黒さんから、横浜開港から戦後(六大事業まで)の都市形成レクチャー。

軍事的理由も含めて鉄道が横浜(当時は桜木町)を通らなくなったところから、横浜が中心から外れてしまった話や、綱島温泉がかつて桃の生産地だった話、郊外の土地利用分布の話(自然・集落・養蚕ほか)など、

二回目は、土井さん(横浜市水道局)と加川浩さん(浅田孝氏が立ち上げ、田村明氏も所属していた日本初?の都市コンサル事務所「環境開発センター」で活動ののち、自ら独立されて横浜の都市デザインに大きくかかわった方)を中心に、主に横浜の都市づくりの骨格となった「六大事業」の
お話しがありました。

そして、第三回目は、私が千葉大学の岡部明子先生をお呼びして、
芸術文化創造都市・横浜、そしてインナーハーバー構想などの見られる2000年代、
「シティ・リージョン」の概念を通して、新たなヨコハマの開国論?とまではいかなくとも、
新しい横浜のネットワーク構築について議論しました。

岡部先生は、ヨーロッパ、特にバルセロナの都市政策にお詳しく、これを中心に話されました。

横浜とバルセロナ、1859年という同じ年に都市の骨格が出来上がった話
(開国・関内の形成とイルデフォンソ・セルダのプラン)を皮切りに、二つの提言を頂きました。

「日本文化は(元々)クリエイティブ」

過去を論理的に整理する「Innvative」より、過去をリセットする(水に流す)ことのできる
文化は「Creative」である、そして、都市をリセットして使いこなすバルセロナと、
それに向いた日本文化というお話。

バルセロナには、これまで、二つのリセットがあり、

バルセロナの一つ目のリセットは、「1976年、フランコ政権の終焉とともに民主化」。
その際、都市デザインとしては『公共空間』を通して都市を開くことを試み、
空地の創出による「多孔質化(スポンジ化)」を目指すと同時に、
(1934年、コルビュジェも少し関わっていたともいわれる都市ビジョン、マシア計画に、
既に多孔質化が計画されていたとのこと)
EC加盟と1992年バルセロナオリンピックを契機に、さらに『海に都市を開く』ことで
大きな公共空間を創出し、海岸線を4㎞に及んで、見捨てられた空間を都市に開いたのでした。
ちなみに、海を都市に開いたもう一つの時代は、中世地中海都市を目指した時の
バルセロナ、大航海時代に向けて地中海の首都となるべく開かれた時代です。

そして、バルセロナの第二のリセットは、2011年における政権交代。
新政権となり、技術系スタッフやチーフアーキテクトも入れ替わったようです。
そこでの都市戦略は、これまでと逆の「都市と山をつなぐ」。
緑の連結による都市と山との関係構築を中心としたプランです。

そして、もう一つの提言は、
「日本文化には、ネットワークは不利」

行政圏域(国や県など)同士のつながりよりも、「バルセロナ」とか「パリ」
という、「都市」が点と点として直接、しかも圏域を超えてつながる都市同士の
連携関係として「シティリージョン」という概念をご説明いただきました。
都市と地域が手を携える欧州、EUモデル、そして、
地中海から中欧(というより西欧の東側)を通り北欧・イギリスに
向けてのライン「ブルーバナナ」がEUの発展ラインであることが示され、
都市の繋がり方に骨格が生まれたようです。
コペンハーゲン(デンマーク)とマルメ(スウェーデン)は国を超えて橋がかかり、
就業地と居住地として(マルメの方が住宅が安い)、日々、橋を越えた通勤が行われているなど、
都市同士がつながることによる「シティリージョン」の事例も紹介いただきました。

これらを受けて横浜のこれからを考えます。
東京と横浜の関係、あるいは横浜の中心と郊外の関係を超えた、新たな都市ネットワークの
可能性はないか、例えば、東京を奥にして東京湾の両サイドに立つ横浜と千葉が、
「海のゲートシティ」として新たな関係を構築するとか(海に近い南の方が、「上」総…)、
あるいは、朝鮮通信使のような、各都市と国内外の多様なネットワークなど、想像は膨らみます。

いずれにしても、ネットワークは「仕掛けた側」が有利とのこと。受け手のネットワーク化は、
むしろ、ストローで吸い上げられる可能性もあり、ネットワークの積極性も提言されました。


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