2012年7月2日月曜日

DAIKANYAMA T-SITEと代々木VILLAGE(その1) ~穏やかな商業再生~

近年、中低層の穏やかな商業再開発は、都心部でも多く見られ始めました。横浜市では、歴史的建造物でもあった、横浜松坂屋(6-7階建て)は、残念ながら解体されましたが、その後、なんと高さ半分の3階建ての商業施設(カトレアプラザ伊勢佐木)となったことからも、もはや、不必要な容積は、インセンティブにならない時代が到来してきています。
逆に言えば、不動産業としてではなく、商業の本質に戻って考えたならば、床の量ではなく、
最も商品やサービスが提供できる床のあり方が問われているのかもしれません。
そんな中、都心部でもいくつか興味深い事例が増えてきました。

一つは、エリアの都市空間を生み出したといっても過言ではない、ヒルサイドテラスに寄り添うように並んでいる、DAIKANYAMA T-SITE。いわゆる、「大人のツタヤ」を中心とした代官山のプロジェクトです。
大谷石の小さな垣根の先に緑の広場の奥に小さな空間と人の流れが・・・。


3連のTSUTAYAと電動アシスト自転車の店や総合オシャレカメラ屋さんなどの小さな店舗群によるその構成は、大体ざっと見ると容積率も50%くらいでないかと思えるほどのボリュームの中に、みちやにわが入り込んでいます。

代官山プロジェクトは、蔦屋書店のカルチュアルコンビニエンスクラブ(CCC)を中心にNTT都市開発の協力で進められ、『森の中の図書館』をコンセプトに、設計コンペが実施され、11の建築提案の中から、クラインダイサム・アーキテクツが選ばれ、RIA(アールアイエー)との共同での実施設計が行われたそうです。
また、アートディレクションは、原研哉さん、そのほか、施設全体のクリエイティブディレクター、ランドスケープデザイナー、写真家、人材採用やブランディングなど様々なクリエイターがかかわり、新多様な人材によるプロジェクトネットワークが想起されます。

お店に入ると、中央2階のラウンジでは、お茶しながら、建築系雑誌のバックナンバーをじっくりと読むこともできる、そして、その横をベビーカーが自由に通り抜けることもある、包容力ある空間です。iPadでメニューもバックナンバーも確認できます。

これまで、蔦屋と言えば、これ以前に、スタバと始めコラボした六本木や、駅前交差点にファサードも表現した渋谷、さらに遡れば、住宅地にマルチパッケージ型のゆとりある空間を生み出した馬事公苑なんかが印象的です。

この敷地のルーツを辿ると、本当のところは詳しくわかりませんが、
水戸徳川家屋敷跡地→村井五郎→朝倉家→日本交通公社→NTT猿楽町社宅及びノースウェスト社宅/社員宿泊寮→T-SITEなどがかかわっているようです。

そして、隣接する敷地には、、「代官山ヒルサイドテラス」がありますが、ヒルサイドテラスは、当時、周辺がまだ農地の頃に、旧山手通りを「ストリート」に、代官山を「まち」へと昇華させ、そこには、まだSOHOという言葉の根付く前から、複合型の都市建築が創出されていました。


朝倉不動産や槇文彦氏をはじめとする関係者の努力でゆっくりと育まれたその空間言語は、開放的な小さな外部空間を敷地内に取り込む空間構造や、民家(朝倉邸)や「塚」という歴史的資産の保全活用という形で周辺に波及しており、中庭や通りを取り込んだ開発、民家や蔵を活かした建物など、新旧を溶け込ませるその構造は、代官山中に浸透しています。


その遺伝子は、外部空間のあり方や、外壁部分の構成など、T-SITEにも反映されています。T-SITE自身、相当、ヒルサイドテラスへのリスペクトがあるようにも感じます。
ただし、ヒルサイドテラスは、ストリートの裏側や横側は、ちょっと弱い印象ですが、T-SITEは、敷地の境界・側面についてもデザイン的配慮は施されている印象です。普段は嫌われがちな駐輪もなんとなく絵になるような・・・。


一方で、都心部でありながら、駐車場を100台以上設けている点は、いろんなことを想起します。

長くなったので、その1は、終わり。その2へ。

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