2014年5月17日土曜日

みやぎボイス2014 ~復興住宅のこえ

去る、2014年5月11日(日)、せんだいメディアテークにて、宮城県の被災地復興について
被災地支援をしている専門家や地域住民、支援団体などが集まって考える、
「みやぎボイス2014 」が、JIA主催で行われました。


第二回である今年は、「復興住宅のこえ」ということで、仮設や復興公営住宅、防災集団移転事業など、すまいに関わる課題についてA:平野部、B:半島部、C:市街地に分かれて議論されました。

まず会の初めには、平野部、半島部、市街地からの復興状況報告がありました。

(1)岩沼市報告:玉浦西地区の防災集団移転事業の事例
(2)東松島市報告:東矢本駅北地区まちづくり整備協議会の事例
 →丁寧な集団移転事業の展開と実践
(3)北上まちづくり委員会:新古里(にっこり)団地の事例
 →公共施設・スポーツ施設等を含めた計画の再編
(4)コンパクトシティいしのまき・まちなか創生協議会
 →まちづくり会社(街づくりまんぼう)などを交えた、プロジェクト型の連鎖的な復興再生活動

その後、上記3つのテーブルに分かれて、それぞれ議論が行われましたが、私は、
C:市街地テーブルのコーディネータ(議論をまとめて報告する係)を仰せつかりました。
このテーブルは、事実上、石巻市のまちなかに関する議論でした。

以下、市街地での議論を掲載します。

■各市街地は、震災以前から中心市街地活性化策に取り組んでいた(が苦しんでいた)。
 旧北上川の「川湊」を基にして発展した石巻にとって中心市街地とは、「土地の記憶と文化、イン 
 フラも重層している地域」であり、新たにまちをつくるより、中心をカスタマイズした方が、コスト的
 にも優れているとも考えられます。まちにある文化は新たに作ることができないという指摘も
 ありました。
■一方で市民自身はそういったまちの将来への関心がとても薄かった。被災によって、一部の市民 
 は、まちの方向性を考えるということに向かい始めた。

という背景がありました。一方、住宅(仮設や移転、復興公営住宅、すまい)という観点から見ると、

被災地では、集団移転の事業でも、「集落」ではなく「団地」、市街地でも、「まち」ではなく「いえ」をつくっている。そこで、

  まちなか居住(すまい)ではなく、まちなか「暮らし」が必要

だという指摘がありました。職業の問題、地域包括ケアなど、高齢者の安心がパッケージでそろっていること、公共施設などを始めた全体の配置、そして、高齢者と若者のバランス良い住まい、こうしたものが地域に必要とされています。

一方、課題としては、高齢者の問題があげられました。高齢者は、新しい場所への(移転に)期待する一方、住まいを移せば移すほど、周辺と関係性を構築できないため、ケアが必要となる。
また、近年では、まちなかスーパーに、健康もかねて歩いて通う高齢者も増えている。
あるいは、石巻で行われている若者・外部の視点で行うイベントが、まち自身を「鍛えている」という指摘もありました。

そうした議論のまとめてとして、住まいしかないまちはまちとして成立しうるのか、ましてや中心部の特徴は、いろんな人、いろんな機能の集まる、「多様性」にあるのではないかということで、次のピリオドのテーマは、

「まち(中心市街地)の多様性(=魅力)」 となりました。

まずは、石巻市で行われている、小さな再生の積み重ね事例として、
(1) ISHINOMAKI2.0が行っているお茶屋二階のシェアハウス(2.0不動産)
(2) 松川横丁ハウス:3軒で行う小規模共同建て替え+シェア
(3)空地マネジメント:空き地をいかに活用するか(街づくりまんぼう)
(4)ご近所再開発  :小さな単位で行う再開発(西郷真理子氏・まちなかの再開発組合)

の紹介がなされ、こうした再生の連鎖の中にしか答えはないという意見がある一方、

積み重ねを束ねる必要性
(1) 各プロジェクト同士(官民・民民)の情報共有の場づくり
(2) テーマの明確化(例えば、「食」をテーマにして重ねてゆく)
(3) ある程度の方向性を統合する、マスターコンセプトのようなものの必要性
(4) どのようなプロセスでこれを実現してゆくか

も指摘されました。

さらに、木造建築の普及により、地元産材の利用のみならず、雇用等にも地域性を付与できる。など、地域経済の循環についても議論がなされました。


また、他のテーブル、会場からは、「中心市街地の衰退の要因は、周辺農村の衰退にある」というご指摘もあり、つまり、これまで、共存関係であった、中心-農村であるが、農村が衰退するに従って、中心部の機能(病院やスーパー)などを呼び寄せてしまい、取り合いの敵対関係になってしまった。その結果、中心も中心を維持することが厳しくなってきているという視点です。まさに、「中心」とは何か、周辺との関係をどのように構築するかは、今後考えてゆく必要がありそうです。


 





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