2013年1月12日土曜日

「私から我々へ」~アジア創造都市国際シンポジウム報告~

本日(2013年1月12日【土】)、YCC(ヨコハマ創造都市センター)にて、横浜市文化観光局主催の
『アジア創造都市国際シンポジウム』が開催されました。

こちらのシンポジウムには、準備段階から、横浜市立大学鈴木先生とともに携わっており、
昨年12月の創造都市セミナーを経て、今回の国際シンポジウムの開催となりました。

海外からは、台湾(台北)、韓国(光州・釜山)、シンガポールからのゲストもお迎えして、
午前中は、基調講演に調査報告、午後は4つの分科会を2つずつに分けて行われた後に
さらに全体会という、非常に盛りだくさんなものでした。

基調講演は、2001年の横浜トリエンナーレにおいて、横浜国大、室井先生ともに、
横浜のインターコンチネンタルホテルにバッタを張り付けた、アーティストの椿昇先生。

「私から我々へ」、つまり、個人からいかに公共性が自発的に生み出せるかを、
ホモサピエンスのこれからのテーマとして掲げられました。

※ルネサンス期に誕生した「芸術家」への懐疑、
※名がないものを生み出す創造的個の重要性
※2つのA(Agile:すばやさ、Adaptation:適応力)の重要性
※都市が常に抱える矛盾(Colosseo:消費という個の暴走の場とSenato:共生模索の場)の理解
※イメージとして残るが形態としてはのこらないフラジャイルをつくること
※市民全員を共犯者にするシステム
※「地域」は「部品」ではない(地域の潜在力の発掘、観光に頼らない地域産業の育み方)
※単年度決済と既得権益のもたらす課題

などなど、非常に重要なキーワードをたくさん述べていただきましたし、
実際に、行われているプロジェクトは、新しいタイプの地域づくりであり、
新たな都市計画家としてのアーティストのあり方ともいうべき衝撃がありました。

次に、調査報告としては、国内創造都市調査、アジア調査、横浜調査の中間報告。
特に、117の自治体が、何らかの形で創造都市政策を実施もしくは関心を有していることが
わかりました。

午後は4つの分科会。
1.アジアの創造都市とは
2.創造都市のエンジンとしての産業活性化
3.担い手がリードする創造都市
4.創造都市における政策展開

私は、分科会2のコーディネータを務めました。
そこでは、台北芸術大学の曾介宏先生から、台湾の文化創意産業の取組み、
経済産業省クリエイティブ産業課の岸本道弘さんから、日本のクールジャパン戦略、
MEBIC扇町(大阪市)の堂野智史さんからは、大阪でのクリエイティブクラスター創生の取組
横浜市経済局長の光田清隆さんからは、横浜文化芸術創造都市政策の紹介がありました。

詳細は割愛しますが、小さな粒子であるクリエイティブ産業の担い手たちが、
細やかで多様でクリエイティブクラスターのネットワークを多数もつことで、
脳のシナプスのように多様な連携の選択肢を持つことが、強くしなやかな適応力と耐性を
手に入れることになる、そのための支援が重要だということだったかと思います。

また、他の分科会で気になったのは、「3.担い手」の中での、BankART池田さんのお話。

国家によって創られた横浜は今でも国家が陰が落とし続けながらも、
シチズンプライドをなんとか作ってきた。
しかし、今一度、組立てを考え直す必要のある21世紀に、
あえて、完成形やゴール、答えの曖昧な「アート」を挿入して、
一見どこに行くベクトルか描くことを放棄したように見えるけれども、
もう一度立ち止まって考えてゆくための仕掛けとして都市づくりの再構築が試みられた
のではないかという話が印象的でした。

最後の全体会では、上記各国のゲストが一堂に会して始まりましたが、
発せられた一つの日本語を、複数の通訳者が各国語に逐次通訳し始める様子が、
正にアジアの「多様性」を表現していたように、
アジア創造都市の特質としての「Cultual Diversity」がキーワードとなりました。

と、とても盛りだくさんの内容で消化しきれないくらいでした。
長時間にわたりお付き合いくださったみなさまには、大変感謝を申し上げますが、
上記の通り、どこか一つでも、これからの都市のあり方を考えるヒントを
各自見つけていただけたのではないでしょうか。

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