2012年6月22日金曜日

松阪市と苗秀社

「牛」で有名な、そして、本居宣長の生活拠点でもあった、松阪市。

かつては、お伊勢参りに向かう人々で賑わう、伊勢(宇治山田)と津の間に位置する人口約16万人の城下町です。今でも、松坂城跡(史跡)を中心に、公園、殿町(武家地)、商人地、職人地、寺町と、「扇形」の都市構造を保ち続けており、殿町には今も商業が入ることなく、緑(槇)の生垣(槇垣)を両側に残す街並みが広がっています。また、この扇形を切り裂くように、参宮街道と和歌山街道が通り、当時の伊勢参りの賑わいや、紀州藩との関わりが思い起こされます。



そんなお城と武家地の間に「御城番屋敷」と呼ばれる武士の長屋が残されています。紀州藩士とその家族の住宅として1863年に建てられたこの長屋は、その佇まいを今に受け継ぎ、そして、現在でも子孫のご家族などが住んでいます。そのまれにみる近世長屋は、国の重要文化財に指定されています。

しかも、実は、長屋の士族たちが幕末に、士族授産で受けた財産を活用し、長屋を含めた資産を持続的に運用するための合資会社「苗秀社」を設立して、会社としてこれらの資産を運用し続けているのです。現在でも、会社は子孫に受け継がれ、長屋の内、5軒は苗秀社のメンバーが居住し、1軒は市が借りて事務所(案内所)としています。残りも、苗秀社が所有しながら、審査を経て、他の人に貸している状況です。このほか、県指定文化財の土蔵も苗秀社が所有しています。
(重要文化財の長屋に住んでいるというのは初めて見ました)。
居住者が資産を会社として運用するその思想が、140年以上前にあったというのは、とても感嘆させられます。

ただし、駅前とその周辺は、他の市街地同様、今後の課題を抱えていそうです。牛だけじゃない、宣長だけじゃない、城下町だけじゃない、松阪、どんなまちになるのでしょうか。

ちなみに、今年の日本建築学会大会で開催されるシャレットワークショップは、松阪を舞台に行われます。

http://news-sv.aij.or.jp/taikai/2012/memorial-event/index.html#07

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