2014年10月3日金曜日

「次世代のインセンティブ」 ~日本建築学会研究協議会~

少し前になりますが、去る9月13日(土)、
日本建築学会大会(神戸大学)の中で、都市計画部門研究協議会

「地域ガバナンスと都市デザインマネジメント -次世代のインセンティブ-」

が開催されました。

現在、建築学会都市計画委員会の幹事を仰せつかっている関係で、
今回の研究協議会の企画は自分で担当いたしました。


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1960年代に日本に導入されたといわれる、都市を魅力的にするための
「都市デザイン」手法の中でも、都市を誘導する手法の一つとして、

「インセンティブ」という、
例えば、容積率を緩和する代わりに、公共貢献や空地の確保、
街並みの統一を図るという誘導手法(いわゆる「アメとムチ」手法)が用いられてきましたが、

近年、大都市では、「都市再生特別地区」(都市再生特措法)などにより、公共貢献として
認められる内容が非常に多様化した一方、何が公共貢献かわからなくなりつつあります
(ムチの無効化)。

一方、地方都市では、そもそも、開発圧力がないので、容積率緩和をアメとしようにも、
アメにもならない(不要な)状況が起きています(アメの不要化)。

こうなってくると、かつてのインセンティブ手法が機能しなくなってくる中で、
容積等の緩和の次の、次世代のインセンティブ手法とはどのようなものになってゆくのか。
そもそも、「インセンティブ」という言葉は、「誘引」であり、都市に人や活動・投資を
惹きつける「誘引力」とはなんなのだろうか・・・。

ということを考える会でした。


主題解説としては、

(1)これまでの都市デザインマネジメントの潮流について出口敦先生(東京大学)
(2)行政の都市デザインマネジメントの到達点と課題について桂有生氏(横浜市)

に整理頂いた上で、次世代の可能性として

(3)地域ガバナンスを構築して、地域で自律してゆく、銀座ルールの事例(竹沢えり子氏)
(4)公共空間を「使いこなす」ことで価値を創出してゆく、水都大阪等の事例(忽那裕樹氏)
(5)「リノベーション」が地域再生たりうるかということで、松村秀一先生(東京大学)

にお話頂きました。

その後、コメンテータも交えたディスカッションでは、

「マクロの最適解とミクロの最適解の調整」の必要性について、もしくは、
縮減時代において、むしろコンパクトに縮退を行うことに
向かうような「シュリンキングのインセンティブ」(出口先生)、

行政の役割がリードする立場から、押し上げる立場へと変わる、
「名フォワードから名ボランチへ」(桂さん)、

銀座は、街並みというよりも「街路空間への合意」を図っていたということと、
これに対する「俺の○○」の行政の話(竹沢さん)、

「小さなまちづくりと大きなまちづくり」の関係性の話、
(高速道路でこけしと目が合う話も面白かった)(忽那さん)、

清水義次さんの主張する「家賃断層帯」の話や、
「場」を生み出す産業化の話(松村先生)、

そして、

「つくる都市計画から使う都市計画」へ(小浦久子先生)、
「マネジメントを都市デザインとして評価する際の関係者の多元化」の話(中井検裕先生)、
「絶対に守る」ものに対しては、きちんと「キャップ」を設ける話(有賀隆先生)、

などなど、いくつか、これからを考えるヒントとなる議論が行われました。

これらを基に、今後の街のマネジメントの仕方について、より深めていきたいと思います。