2013年2月24日日曜日

「染の小道」

去る2月22日から24日(本日)まで、西武新宿線中井駅周辺で、
『染の小道』というイベントが開催されました(私は、23日に立ち寄りました)。


かつての中井駅周辺は、江戸郊外の「落合蛍」も飛び交うきれいな水の流れる行楽地。
江戸の染物産業も集積していたのかもしれません。
少なくとも、戦後には、妙正寺川・神田川周辺には、染物工場が集積しており、
妙正寺川で染物の作業が行われていたようです。
その後、環境や社会の変化に伴い、工場は減少していきましたが、
現在でも染物をされている若い方々が残っており、活動を続けていたようです。
(新宿区染色協議会)
しかしながら、これまで、周辺の商店街やまちとはつながっていなかった。
そんな中で、5年前(拡大されたのは3年前?)から、行われているイベントなのだそうです。

訪れると何よりもまず目につく見どころは、「川のギャラリー」。
妙正寺川の上に連なる染物の帯が川面に映り、人々の心もつながります。


そして、中井駅周辺の各商店の軒先に展示されている暖簾や染物の展示。
各店舗の方々と話をしながらつくられた、デザイナーさんや染物の職人
(およびこれを目指す学生さんなど)による染物がまちじゅうにはためきます。

道案内には、和服の学生スタッフさんは、さらに彩りを添えています。


歩いていると、横笛で奏でる「コンドルは飛んでゆく」が流れてきて、
また布のはためきにマッチしていました。



そして、地域の巻き込み方がすごい。中井の多くの商店のほか(全部で87枚ののれん)、
近くには、染物をはじめとするデザインも専攻する文化学園大学などもあり、
スタッフとして参加しているほか、目白大学などの周辺大学、
そして、自らギャラリーを有する寺社なども開放協力を行っており、
正に、まちじゅうが染まっているのでした。

そしてそして、何より、このはためいている染物につられて、
今まで気づかなかった視点を獲得するのが魅力なのです。
何とも思っていなかった妙正寺川の水面に気づき、道と駅と川の位置関係に気づき、
川沿いにあった魅力的な民家に気づき、川に向けての小さなスペースやカフェに気づき、
今まで気にもしなかった隠れ家的なお店にきづき、路地の行き止まりにあったギャラリー
に気づく。。。新鮮なまちへの気づきを感じます。

 

まち、人、生業(なりわい)、産業、商い、風景が統合的につながる
とてもステキなイベントでした。

かつて、自分もこの地区の景観まちづくり、景観調査に携わったことがあり、
その際には、まちを隈なく歩いていたつもりでしたが、
今まで気づかずに今回初めて知ったことがたくあんあるし、
こういう方法は思い浮かばなかったなぁ、「あっぱれ!」、
というステキなイベントでした。
関係者の皆様、お疲れ様でした。

2013年2月21日木曜日

港北オープンファクトリー!

去る、2月16日(土)、横浜市港北区で、
「港北オープンファクトリー」というイベントが開催されました。
 
「オープンファクトリー」と言えば、そう、大田区での「おおたオープンファクトリー」
を開催しましたが(主催者側でしたが)、第一回のおおたオープンファクトリーに
御参加頂いた、港北区の方が、これはいいイベントだということで、
港北区でも実施しようということになりました。
 
実際にこのイベントやるのは、大変なのですが、港北区では、
港北区区政推進課さんと、これを支えるコンサルさんの連携で進められています。
 
  
港北オープンファクトリー(以下、港北OF)は、5工場+お寺が見学ラインナップ。
お寺がセットなところが、港北区の重層性を感じさせます。
 
 
原則、オール事前予約制でしたので、突然、自由に来場できるわけではありませんでしたが、
見学工場の一つ、日本軸受加工さんの二階が「交流スペース」として開放されていました。
交流スペースでは、スタッフさんやこどもたちの談笑が聞こえてきます。
 
 
そして、ネオ屋台も(どこかで見たことがあるが…)。
 
 
以下、見学した工場です。
(1)ニッパ
段ボールを始めとしたパッケージ包装を企画から配送まで一貫して行うニッパでは、
スチロールに変わる、簡易にできる段ボールの包装支え材づくりを体験。
5秒で作れたら、景品がもらえる?!
 
 
一階には外からも見える企画設計スペースがあり、
お茶を飲みながら打ち合わせして、その場で加工試作しつつ会議をする…みたいな空間で、
かつ、一般にもカフェとして開放されています
地域とのコミュニケーションを採りながらソリューションする、新たな工場像が想起されます。

 
(2)アムコン
アムコンさんは、スクリューを利用した、エコな汚泥脱水機メーカー。
通常の汚泥脱水は、膜とか遠心分離とかするわけですが、
エネルギーや目詰まり問題があるなか、
重力と圧力だけで脱水してしまう、正に工夫の逸品。
次世代の環境管理に大きな可能性を感じさせます。
(でも、横浜市の下水処理場では使われてないらしい…)。


(3)新横浜テクノヒルズ住宅地の奥の丘の上に、小さな工業団地があります。
そこが、港北OFの集積拠点です。
 

東京ダイスさんは、
漏れの少ない、精度の高いノズルを始めとした、硬材等の細かな加工を行っています。
微細放電で、「髪の毛レベル」の穴をあけ、穴の中を磨く。
 
日本軸受加工さんは、
ベアリングの追加工を中心とした、手作り感あふれる工場でした。
 
そして、おおたで大反響の「モノづくりたまご」がここでも手に入る!
港北の工場で作られた製品が、ガチャガチャの中に入れられ、
300円でドキドキしながら、ダイヤルを回す。
 
みんなのおめあては、「パズル」でしたが、
それ以外にベアリングやお菓子の入ったハット、UFO など、それぞれ。

しかし、何よりも、港北OFで感じたのは、おおたともまた異なる地域の背景です。
 
 
尾根のふもと(河岸段丘?)を通る、おそらく新羽あたりの街道筋にあたる道には、
奥に丘の緑の帯や、竹やぶが連続して続いており、
手前には、豊かな農地や、昔ながらの立派な農家の家、そしてその奥には蔵が見え、
そして、その先々では子供たちの声もするような住宅地、
そんな爽やかなまちでのオープンファクトリーは、大田とは少し状況は違いますが、
蔵、緑、街道やカフェなどとの連携も考えると、違った可能性を感じました。
 
 

2013年2月19日火曜日

きゃりーぱみゅぱみゅと美ら地球(ぼし)のCOOL JAPAN

さて、突然謎のタイトルです。

従来型の観光が立ち行かなくなりつつある近年、「観光」を考える上で、
いくつかの論点があります。
例えば、住んでよし、訪れてよしの町を目指す、つまり、暮らしが魅力的であれば
おのずと人も訪れるという発想(そのキーワードとしての「着地型観光」「観光まちづくり」)、
一方で、「インバウンド」(海外からの旅行者)を高める必要性と日本の発信の中での
キーワードの一つである「COOL JAPAN」、この言葉は、創造都市論の中でも
用いられます。

つい先日、TBS『情熱大陸』できゃりーぱみゅぱみゅさんの特集をやっていました。
2年もしないうちに、世界各国で大人気のようでした。
ベルギー市民に人気のライブハウスで、普通にライブをして、受け入れられている
その様子は、正にCOOL JAPANの一つかもしれません。
彼女とそれを支えるライブやパフォーマンス全体が、やはり、欧米では生まれえない
日本的な空気をもっており、その日本的なライブのしきたりに忠実に西欧のお客さん
が乗っている姿に、一人で世界を動かす力をも感じました。
しかし、きっと、これが音楽やファッションとしてマーケットに固定化されてゆく瞬間に
陳腐化されてゆくのだろう、つまり、彼女本人が常にクリエイティブであることそのものが
COOLなのであって、その結果生まれた製品は、あくまで二次商品なのだなということです。

そして、正反対のように見える、日本の農村での観光の一つ、
飛騨市古川町にある小さな旅行会社「美ら未来」主催のツーリズム。
元々外資系コンサルに勤めていた代表の山田拓さんを中心に、
飛騨里山をサイクリングで周りながら、地域資源メンテナンスを行う
ボランティア・ツーリズムが、しかも、外国人なども引き入れて行われているようです。
この活動をしながら、山田さんらは、周辺地区の古い民家をすべて訪れ、
掃除したり民家を磨いたりしながら、用水を聞いたり、空き家を見たりという
地道な活動をしながら情報ストックを得つつ、しかも磨いてきれいになるという、
本来日本の里山が持つ非常に高い価値・魅力を引き出すことで、
外国人観光客にも非常に高い評価を得る、逆タイプのCOOL JAPANではないかと
思います。

そして、この両者に共通しているものとしてのヒューマンキャピタル(人的資源)。
本質的にある価値(独自性と地域資源)、そしてこれを発現させる「人」のマッチング
が価値創出には重要な気がします。

全国各地で観光振興は競争的に展開されていますが、どこも、
客観的に地域を(しかしながら、地域に入り込んでじっくりと)見つめ、動く、
目利きができて、戦略的で臨機応変、行動的な人材は、案外少なく、こうした
人(もしくは組織・仕組み)を支援する仕組みが必要ではないかと思われます。