2012年6月30日土曜日

「すみだ まち処」と「ソラマチ」

5月にオープンして、絶えず人の溢れる、下町、東京、日本の人気スポットとなったスカイツリーかいわい。
スカイツリーが見えるだけでにぎわうホテルや周辺の各町にみなぎる力が波及しているようです。

そのスカイツリーの開発の中に、墨田区の産業観光の拠点となる「すみだ まち処」という場所がオープンしています。すみだのものづくりやまちあるき、観光、歴史文化に関する情報が集まる施設です。すみだの特産品やデザインされたものづくり製品などの集まるセレクトショップです。

そこでは、「すみだモダン」と呼ばれる、区認証のデザインものづくり製品、「ものづくりコラボレーション」と呼ばれる、ものづくり技術とデザイナーのコラボレーションによる新たなデザイン製品開発プロジェクトなどによる製品が紹介、販売されています。

建築金物業者が作る、おしゃれな金属トレーとか、ばね技術を生かした名刺置き、美しいガラスの醤油入れ、プラスチック成形射出による、お皿にもなるまな板、「お皿まな板」など、技術とデザインの化学反応による製品で溢れています。
デザインコラボレーターとしてデザイナー(シトラスさんやワコールさんなど)の方々が参加しています。正に、ものづくりデザインのフロンティアです。



また、この開発、ソラマチは、街区の外側に様々にはりめぐらされた動線を通じて、いろんなところを歩くことができます。もっとこの動線を生かした施設配置がなされていたらよかったなと思います。
開発の南側を流れる北十間川周りもとてもきれいに整備されています(川を渡る動線や川に入る階段が少ないけれど)。水門コントロールによって、川の中にもみちが作られています。そして、川の周りは「公園(おしなり公園)」として整備され、きれいなランドスケープが展開しています。
スカイツリーではなくて、北十間川を中心に見れば、渓谷(Valley)ともいえるこの空間、南側の沿道も含めて、「すみだバレー」として一体的な魅力ができると面白いなと思います。
ソラ、マチ、カワのコラボレーション。

2012年6月25日月曜日

喜多方プロジェクトと「くらにわ」

多加水ちぢれ太麺とジューシーなチャーシューであっさりときらめく醤油ラーメンで有名な町、喜多方。

磐梯山の裏側、会津盆地に位置する、人口5万数千人の小京都とも呼ばれる喜多方市は、
「蔵ずまい」のまちでもあり、市内に4,000棟を超える蔵がまちのここかしこに建っています。

一方で、中心市街地は、他の都市と同様、にぎわいの減少や空き地空き家の増加など、
様々な都市問題も抱えています。

まちなかには、(福島)県道や、幅員を広げた市道も走る中、豊かな公共空間(道路)を
契機とした、豊かなみち=まちづくりが進められており、これに関わってきました。

県の幹線道路が通る中心商店街では、歩道にかかるアーケードの撤去と無電柱化、
アーケード撤去に伴う雪対策としての無散水消雪化、そして、11m程度の限られた
幅員でありながらも、歩行者空間を大切にするために歩道を広げてフルフラット
(歩道と車道の段差のない道路断面)となるような公共空間整備が広がっています。
また、一方で、アーケードのなくなった街並みを再生するために、各商店街は
それぞれの地域で、景観協定を締結し、建替え時に運用するとともに、ファサードの
再生事業を進めています。



そして、無電柱化しても地上に残ってしまう地上機空間が歩道の邪魔にならないように、
民間の敷地側に地上機置場を兼ねた小さな広場空間を確保し、これを「くらにわ(蔵庭)」
と呼んで、整備を進めています。



正に、官民連携による新たな都市空間の創出に関する試みです。

2012年6月22日金曜日

洋野町プロジェクト

青森(八戸)との県境、太平洋に面する人口約2万人の小さな町、岩手県九戸郡洋野町。

海側の旧種市町と山側の旧大野村が合併してできたこの町は、東日本大震災では、リアス式の地形や防潮堤の効果もあり、沿岸の港町で少し被害がありましたが、幸いにも死者等を出すことはありませんでした。

この町の地域づくりには、2000年から東京大学都市デザイン研究室が関わり、私が参加
(2003年)してからは、もうすぐ10年の歳月を迎えようとしています。

中でも特徴的な風景の一つに、茅葺民家があります。建築史家、藤森照信先生に「マンモスのようだ」と言わしめた、野性味あふれるその姿は、豪快で生生しさを感じる風景であり、「芝棟」と言われる、屋根の上に土を置いて野芝や草木を植えることで、棟(むね:屋根と屋根の重なる部分)を押さえるその姿は、縄文時代からの手法だともいわれています。



そんな茅葺民家の実態とこれを持続的に大切にしてゆくべく、昨年度から、横浜国大建築史建築芸術研究室(大野敏先生ら)とともに、茅葺民家の調査研究を行っています。
町全体に広がる60棟以上の茅葺民家の分布やその利用実態、改修の状況を把握しつつ、
町に一棟しか残っていないと言われる「曲屋」(まがりや:馬屋と一体となった、L字の平面をした民家)の詳細な実測なども行う一方、材料や職人、資金の不足、現代生活への適応などで課題の多い茅葺民家とどのように付き合ってゆくかについても、考えてゆかねばなりません。

しかし、藤森先生の「ニラハウス」のように、まちじゅうにニラの花が咲き誇る姿をイメージしてみるとわくわくしてきます(芝棟には、かつては、本当にニラを植えたこともあったそうです)。



松阪市と苗秀社

「牛」で有名な、そして、本居宣長の生活拠点でもあった、松阪市。

かつては、お伊勢参りに向かう人々で賑わう、伊勢(宇治山田)と津の間に位置する人口約16万人の城下町です。今でも、松坂城跡(史跡)を中心に、公園、殿町(武家地)、商人地、職人地、寺町と、「扇形」の都市構造を保ち続けており、殿町には今も商業が入ることなく、緑(槇)の生垣(槇垣)を両側に残す街並みが広がっています。また、この扇形を切り裂くように、参宮街道と和歌山街道が通り、当時の伊勢参りの賑わいや、紀州藩との関わりが思い起こされます。



そんなお城と武家地の間に「御城番屋敷」と呼ばれる武士の長屋が残されています。紀州藩士とその家族の住宅として1863年に建てられたこの長屋は、その佇まいを今に受け継ぎ、そして、現在でも子孫のご家族などが住んでいます。そのまれにみる近世長屋は、国の重要文化財に指定されています。

しかも、実は、長屋の士族たちが幕末に、士族授産で受けた財産を活用し、長屋を含めた資産を持続的に運用するための合資会社「苗秀社」を設立して、会社としてこれらの資産を運用し続けているのです。現在でも、会社は子孫に受け継がれ、長屋の内、5軒は苗秀社のメンバーが居住し、1軒は市が借りて事務所(案内所)としています。残りも、苗秀社が所有しながら、審査を経て、他の人に貸している状況です。このほか、県指定文化財の土蔵も苗秀社が所有しています。
(重要文化財の長屋に住んでいるというのは初めて見ました)。
居住者が資産を会社として運用するその思想が、140年以上前にあったというのは、とても感嘆させられます。

ただし、駅前とその周辺は、他の市街地同様、今後の課題を抱えていそうです。牛だけじゃない、宣長だけじゃない、城下町だけじゃない、松阪、どんなまちになるのでしょうか。

ちなみに、今年の日本建築学会大会で開催されるシャレットワークショップは、松阪を舞台に行われます。

http://news-sv.aij.or.jp/taikai/2012/memorial-event/index.html#07

2012年6月7日木曜日

京都まちなかこだわり住宅



前ブログに関連して、ずいぶん前ですが(2006年)、京町家等を含めた京都の住まいの文化を
継承しつつも、新しいまちなか居住の形をデザインすることを目的とした、
「京都まちなかこだわり住宅」コンペが行われたことがあります。
(財)京都市景観・まちづくりセンターと、都市居住推進研究会という会の主催で行われました。

http://machi.hitomachi-kyoto.jp/c_kodawari.html

http://www.tjk-net.com/news/21_30/29_2.html

単なるコンペではなく、審査の過程で、ワークショップもしたりしながら、地域とのつながりも
持ちつつ一棟のモデルハウスを建て、売れればそのまま売ってしまうという興味深いものでした。

残念ながら、一等ではありませんでしたが(次点)、一等案(魚谷さん)は、少子高齢化・核家族化
などを踏まえ、部屋数を増減できるなどフレキシブルな生活変化に対応できる点や、
建材には京都の木材を使い、構造と仕上げを一体にするなど、技術的にも大胆な試みのある
ステキな提案でした。

そして、その後、この案は実際に建てられ、住まいとして使用されているほか、近年でも
数々の賞に輝いているようです。

で、今回、その敷地もついでに見てきました。
裏通りにひそやかに建つ、古くて新しいたたずまい。

2012年6月5日火曜日

楽町楽家

京都のまちなかで開催された、住まいとしての町家のよさを体感してもらい、
これからの暮らしについて考えようという催しです。
今年は、2012.05.25(金)~06.03(日)まで開催されました。

http://kyomachiya.net/rakumachi/

7回目を迎えるイベントですが、今年は、昨年度の休憩をはさんで、リニューアルオープンされたそうです。
延べ33軒ほどにおよぶ、普段は普通の住宅として利用されていたり、ちょっとした店舗やオフィスと併用されている町家が、この期間だけ拝見できました。
普段はお住まいになられているところですから、なかなか知ることのできない、町家暮らしの魅力と問題などの様子を、住まい手ご本人から伺うことのできる貴重な機会でした。
一階をギャラリーとして普段から貸している町家、毎週金曜日だけ町家のよさを体感してもらうためにランチを開いている町家、本当に普通にお住まいの町家、改修工事中の現場見学まで、築80-90年以上の歴史を持つ建物とそこに息づく暮らしの歴史を窺い知ることができました。

京町家再生に向けて様々な取組みが展開されている京都、今後も楽しみです。

2012年6月4日月曜日

環境都市デザインスタジオ




横浜国立大学大学院都市イノベーション学府には、実践教育科目というカリキュラムが用意されています。
そこでは、「スタジオ式教育」ということで、フィールド等を対象とした実践型演習が進められており、学府全体で18のスタジオが同時に展開され、中でも建築系では3つのスタジオが進んでいます。
都市環境に関わる系統(UE系)では、「環境都市デザインスタジオ」が行われています。

本年度は、横浜駅周辺の都市環境を再編集するためのリサーチと、これを基にしたプランニング、プロジェクト計画が目標となっています。

http://www.arc-ynu.jp/大学院スタジオ/