2015年5月7日木曜日

喜多方探訪:その1 ふれあい通り

久々に投稿です。

GWは、私が、十年来関わっている、福島県喜多方市を訪問しました。
喜多方市では、2001年より、東京大学都市デザイン研究室らとともに、さまざまな
まちづくりの活動や実践が行われてきましたが、ここでは、その一つ、
ふれあい通りでの取り組みを紹介したいと思います。

「ふれあい通りの『みちのまちづくり』」



喜多方市は、中世末期(1500年代後半)、蒲生氏らによる、市をもとにした町立て
を基にしてできた在郷町であり、その中心部の一つ、「小荒井」が、
現在のふれあい通りであり、現在に至るまで発展し続けました。

現在のふれあい通りは、3つの商店街(仲町・中央通り・下南商工会)に分かれていますが、
この3つが一緒になって、ふれあい通りを形成・運営しており、喜多方の中心商店街
としてこれまで続いてきました。

一方、都市計画的には、この道路は県(喜多方建設事務所)が有する都市計画道路であり、
拡幅の予定線も引かれています。しかしながら、喜多方は、日本一の蔵の町でも有名であり、
そのメイン通りでもあるふれあい通りには、登録文化財でもある多くの蔵や建築物も
存在していることから、現在の幅員を維持したままま、その地域特性を活かした街路
事業が実施されています。

また、他都市と同じくして、御多分にもれず、昭和50年代には、商業近代化事業の
一環として、アーケードが設置されました(そのおかげで蔵が隠れてしまい、目の前で
「蔵の街はどこですか?」と聞かれることも…)。しかしながら、現代においては、老朽化が
進む中で、アーケード撤去が議論されました。雪深い喜多方地方では、単純にアーケード
を採ればよいというものでもなく、いろんな議論の末(一時期は、店蔵を持つ店舗が
自分のところだけアーケードを撤去したこともありました)、アーケードを撤去することを
商店街で決断しました。

これに伴って、県も地域のまちづくりを尊重する道路整備で支援をしてくれました。
道路整備に関して、地域の声を聞くような委員会を設置して、意見収集をした後に、
まず、アーケード撤去に伴う街路整備事業の中に、無散水消雪(地中にパイプを埋設し、
流れる水の熱で雪を溶かす)事業を実施してアーケード撤去に伴うデメリットを解消すると
ともに、無電柱化事業も実施し、幅員が拡幅しない中での歩行者空間を豊かな街路
設計を実現してくれました。

歩行者空間としてもフラットで快適な空間を目指した上に、歩道と車道の境界は段差を
なくしてフルフラットとし、車止めについても可動の植栽枡(花壇)を地元でつくって用いる
ことで(地元産材の荻野石を用いて地元で作成しました)、祭りやイベント時には
自由に道路空間を活用できるような工夫を行いました。







また、無電柱化に伴う変圧器(トランス)の存在により、通常は電柱をなくしても歩行者空間が
広くならなかったりするものですが、この変圧器(トランス)置き場を、民間の敷地側の一部を
提供してもらって、設置することで、歩道の有効幅員を確保するとともに、単に置き場とせずに
置き場とともにポケットパークを設置することで、一体的な活用を試みました。
(いずれも道路扱いの空間)
喜多方では街路の後ろ側には蔵が並ぶことも多いことから、「蔵庭」(くわにわ)と名付けられました。
蔵庭は、県が所有していますが、実際の管理は地元商店街が実施しています。



さらに、こうしたアーケード撤去事業の実施に伴って、これまでなおざりにしてきた店舗の
正面(ファサード)があらわになってきたことから、商店街が自分たちで補助金を獲得して、
アーケードの改修事業を実施し、数十軒の店舗がファサードを改善しました。



このように、様々な取り組みを重ねてきたふれあい通りでの活動はどう評価されるのか、
地元、店舗、来訪者なども含めた評価をしていきたいと思っています。

来訪した日は、偶然、歩行者天国としてみちを活用している日でした。
実際に蔵庭も、地元商店街が地域団体に貸与し、そこでライブを行っていました。
(狭いので、観客席は道路や隣地を活用し)官民の連携による使い方も見られました。




今後、どう発展してゆくか、楽しみです。


0 件のコメント:

コメントを投稿