2013年5月1日水曜日

「都市を詠む」 -横浜建築都市学S報告-

横浜国大・都市イノベーション学府共通科目「横浜建築都市学S」。
都市や建築・芸術に関わるテーマ型オムニバスプログラムですが、
今年度は「都市の多層性を読む」をテーマに、様々なゲスト講師を
お呼びして、ディスカッション等行います。

第二回の4月30日は、都市史・都市計画史をご専門とされているアーバニスト、
慶應義塾大学環境情報学部(SFC)の中島直人准教授をお招きしました。
中島先生が挙げてくださったテーマは『都市を「詠」む』。

正に単に都市を読む(読解する)だけでなく、
都市をつくる(UrbanDesign)だけでもなく、
まるで詩歌の作品のように、これからの都市の世界観を「詠み」あげる。
そのためには、都市の読解力も必要だし、都市をつくる心も必要だという、
これこそ、都市を詠む(=Urbanism)なのではないかという御提言でもありました。

これは、正に都市計画(史)学的にも、最前線・最先端の到達点ではないかと、
ある種の感動を覚える大変すばらしい御講義でした。

藤沢駅前にある、とあるビルの谷間のような中庭空間が、
時ににぎわいをもたらす市民のへそであることから始まり、
実は、都市計画家(都市プランナー)の権威、石川栄耀氏の広場空間概念との類似性、
そして、都市再開発法が生まれる前の再開発黎明期の日本の都市づくりとの関係、
その再開発が巻き起こるための駅も含めた、
駅前開発・土地区画整理事業・市全体の都市計画・首都圏整備計画との関係と、
紐解けば紐解くほど、都市空間の多層的なスケールの展開が根っこのようにつながってきます。

そして、時間で紐解けば、そもそも、藤沢宿と鵠沼海岸(江の島~別荘地)という二核を
江の島道がつなぐという都市構造と鉄道駅の結節点としての意味などなど・・・。
今度は時間の多層的なスケールが広がります。

これまでの都市計画/都市計画家とは、ある意味で、
詠み人知らせずの美学もあり、どんなプランであったかは議論されても、
誰の(想いや意図でできた)計画かはあまり目を向けられませんでした。
しかしながら、アカウンタビリティやトレーサビリティの重要な現在、
ブラックボックスでつくられる都市の背景を知るためにも、かかわった人たちの意図を
知ることはとても重要なことです。
一方で、建築は、誰の設計・思想でできたものかが、これまでとても重要とされてきました。
しかし、様々な都市の担い手が増える現在、クラウドネットワークで物事が
構築される世の中でもあります。

この二つの大きな潮流をどのように組み上げて新たな都市の担い手がありうべきか、
とても重要なテーマです。

また、これまでの都市史学が、都市の歴史をどう築いてきたかを
過去から現在に向かって見つめてきたとすれば、
タブラ・ラサ(白紙)がない、都市の資産を積み重ねることが必要な今、
現在から過去に遡りながら、今との関係を見つめることが、
逆説的に未来へのベクトルをつくることになる…そんな地域文脈デザインが
技術としても必要とされているのかもしれません。

そして、そのことを、

Urban Design(都市をつくる)からUrbanism(都市を詠む)

と表現いただいたのかもしれません。

私はまだまだ都市を詠みきれません(そして読み切れません)が、
詠みきれないからこそ、発見の喜びもひとしおかもしれません。

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